約 4,798,924 件
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/121.html
冒し、侵され、犯しあう(前編) ◆xzYb/YHTdI 人生は パズルゲーム なんです 心当たりが無くなりました。 第一話 ~零崎人識と鑢七実~ 「『人が死ぬとき、そこには何らかの『悪』が必然、『悪』に類する存在が必要だと思う』―――っつーんが、まぁ、俺の兄貴の口癖でな」 その森の中には小柄な二人組の姿がしかなかった。 しかしそれは、別段特別特殊な状況というわけではなくて、こんな広大なエリアの一つ、皆それぞれ当初の目的地に到着できた頃あいだからこんなものである。 むしろこんな時間にこんな場所にいるのが珍しい、とまでは言えば、少々言い過ぎではあるだろうけど。 一人は、顔面に刺青が入った少年だった。上半身は軍服の様な長袖コートで、それにセットで釦の光るズボン。 小洒落たサングラス、右耳には三連ピアス、左耳には携帯電話用のものだと思われるストラップ。髪は少し短かった。 もう一人は、小柄な体格に合わせた地味に清楚な着物姿で、後ろで髪をまとめている。 他には洒落ッ気の見当たらない姿なりをしており、手には無骨な何かが握られているぐらいか。 しかし、残念ながら他に描写すべき外観がありもしない。 少年と少女は―――。 朝日の差し込む森の中で会話を交わしていた。 「あら、兄がいたのですか。あなたのような『欠陥品』がもう一人もいるのですね……。それこそ『悪』です」 「はっきり言ってくれるなぁ!オイ!」 うんざりとした表情を浮かばせる少年に、特に変わらない無表情の少女。 彼らの足取りは小柄なくせに異様に早い。 正確に言うのであれば、七実の足取りが早く、人識がそれに合わせている。といった具合だった。 この分ならば、あと30分もしない内に到着するだろう。 「―――――つーか『欠陥品』は俺じゃねぇよ」 「あら、では出夢さんがおっしゃっていた『厭世観まるだしのアホ』って人ですか?」 「―――――?まぁ――――そうだな。そんなやつだ。っつーか肯定なんかしたら俺がそんな奴みてぇじゃねぇかよ!!」 「…………楽しそうでいいですね。いえ、悪いのかしら」 「楽しくねェよ。なんかな。ちなみにそいつは『戯言遣い』なんてダセェ名前を名乗ってるらしいぜ」 「らしい?」 「俺は『欠陥製品』って呼ぶからな」 って何で俺があいつのことを話さなきゃいけねんだ。といまさらながら少年は言う。 勿論少女には少年がこんなに嫌そうにする理由なんて分かるわけないし、少年はそれ以上話そうともしない。 しかしただ、一つ分かったことがあった。理解できたことがあった。 「ふふっ。ますますお会いしたくなりました」 「ぁあ?何か言ったか?」 「いえ、なんでもありませんので気になさらないでいいですよ。―――いえ、悪いのかしら」 ともあれ、少年と少女は走っている。 囲われて、壊れているような学園を目指して。 (第一話―――了) 第二話 ~球磨川禊と西条玉藻と零崎双識~ 「………………ゆらーりぃ」 男は計画で人を殺し、女は突発で人を殺す。 しかし残念ながらこの場合はどちらにも当てはまらない。 何故なら、ヒトゴロシの少女は、『何も殺せてはいないのだから』 『いてて、全くもう。痛いなぁ』 「………………ゆらり?」 確かにヒトゴロシの少女は傷を与えた。 ただしこの場合だと与えただけ。 『全く……。せっかくいい瞳の少女がいたと思ったら。ただの狂人かよ』 『まぁでも安心してよ。この恨みは君とは違う誰かに晴らしでもするからさ』 その割合浅く済んだが、傷を与えられた瀕死の少年は、平気で立ち上がり、スタスタと背中を見せて歩いて――――。 『行くとでも思ったかい』 螺子。 そうとしか呼べないそれが彼の両手から突如として現れる。 不思議に思われようが、あり得ないと言われようが、化物かと考えられようが。 それは事実。 そして、少年は、少女を、螺子で、 螺子伏せる。 勿論、それはヒトゴロシの少女に対してだ。 だけども、それは無為に終わった。 「ゆらぁり―――――――!」 キィィン 無骨で不気味な金属音が響く。 螺子と、グリフォン・ハードカスタムが、交差し合い、その両方が弾かれた。 毒に支配されても腐っても《狂戦士》。むしろ毒に支配されているからなのだろうか。 そのヒトゴロシの少女は、その一筋の攻撃を、手に持つナイフで防御した。 しかし、『闇突』と呼ばれ、《狂戦士》として恐れられるヒトゴロシの少女の肉体でも、 自称人類最弱を名乗るが、その実力は確かな瀕死の少年では、絶対的で圧倒的な力の差はあった。 結果的に言うのであれば、グリフォン・ハードカスタムは弾き飛ばされてしまった。 「……………………」 そしてヒトゴロシの少女はそれを追いかけた。 先ほどの詐欺師の青年と対峙した時と同じ様に。 瀕死の少年に背を向けながら。 勿論、詐欺師の青年とは違い、この瀕死の少年は逃走などしない。 それがあたかも普通であるように。 ヒトゴロシの少女の背中には、鋭く、冷たい感触。 制止。 静止。 動かない。 混乱してなお、動かない。 というよりは、動けなかった。 バサァァァァァ。 なんて大層な効果音の元。 足元を縄で縛られて、刹那のうちに空に上がってしまったから。 いわいる宙吊りと言う格好で捕まってしまったから。 目の前で作動したこのトラップに瀕死の少年は心当たりがなかった。 『…………』 「…………」 唖然。 ――――――――としている風でも無く、嫌味なまでに二人の少年少女は落ち着いていた。 ちなみにヒトゴロシの少女は、スカートは隠そうとせず、もろにその、一部の人間からは聖域と称されるそこは、惜しみ気もなく晒される。 その描写をするのであれば、そこにあったのは、漆黒と表すが相応しいスパッツ。俗に言うパンツじゃないから恥ずかしくないもん!―――というものなのか。 残念ながら違うと思われるが。とにかくそれはパンツという代物ではなかった。 それをしっかりと(危険かどうか)確認してから瀕死の少年は一回身を引く。 左、右、左。とまるで何も疑うことを知らない無垢な子供が信号を渡る時の様に首を振り続けて、最終的に、ある一点に留まっていく。 ヒトゴロシの少女の後ろ側。そこを瀕死の少年は凝視する。そこから男が現れたから。 その視線の先に現れた―――――否、始めからそこにいた風に演じる細身の青年は姿を現した。 「チッ。なんでどいつもこいつも最近のやつらは皆スパッツなんだ!!」 『…………』 「…………」 変態だった。 ■ ■ そこからの話の展開は次々と終わっていく。 まず最初にこの話で脱落していったのは、ヒトゴロシの少女だった。 「悪いけど、ちょっと寝ててくれるかい?」 一応は質問の形こそとってはいるが、実際の行動は有無を言わせないほど、返答を待つまでもなく、 よく漫画か何かで見かける首筋への手刀。素人がやればそれは、何の意味を成さないことが多い。 しかしこれでも、細身の青年はプロのプレイヤー。その中でも群を抜くほど実力の持ち主。 その辺りの技術で抜かりを取ることは無かった。 それでも、そんな細身の青年でも、一つだけ失念。―――いや、これは知れなければどうしようもない話ではあったが、ミスを犯しておいた。 それは、エリミネイター・00という凶器。それをヒトゴロシの少女に一瞬でも見せてしまったこと。 確かにヒトゴロシの少女は毒に身体を犯された。人を斬りたいという毒に。 でもだ。逆に言うのであれば先ほどから、ヒトゴロシの少女がグリフォン・ハードカスタムに固執しているのには理由がある。 例えば、プロのゴルファーが上手くなるためにも、徐々に高くて良質なクラブを求めていくのと同じ様に。 ヒトゴロシの彼女も、自分が人を殺すのに最適である使い慣れたこの二つのナイフを求めていたのだ。 今のヒトゴロシの少女の目的は何て言ったって、人殺しなんだから。 そう言う理由から、そのナイフの所持者には容赦無く叩き斬るだろう。今はまだ夢の中だが、いつかはきっと―――――。 「――――さてと、全くもって。こんな可愛らしい少女をそんな螺子で刺しつけようとするなんて何考えているのさ」 『あなたこそ、何やってくれるんだよ。全くもって。先に攻撃仕掛けてきたんだよ。そう言う風に考えるなら僕は被害者だ!』 「――――ふぅん。まぁきみは『普通』――――――――――ではなさそうだね」 『ん?そりゃまぁ僕は『過負荷(マイナス)』だからね』 「『過負荷』……。聞かない名だな。呪い名の一つか?………えー……と、きみのお名前って何だっけ」 『球磨川禊――――の弟の球磨川雪――――じゃなくって、正真正銘、球磨川禊だよ☆』 「名前は大切にしときない。――――さもないと鬼が襲いかかってくるかもよ」 『それってあなたのことでしょ。―――それに人が名乗ってあげたんだから自分も名乗ったらどうかな。人としての器がしれちゃうよ』 「それは失礼したね。―――でもね、私、私たちは分類上人ではなく鬼とされているのでね。そこらの理解がほしいね。 では、遅れたが私の名前だ。零崎双識。これが私の名前だ、どこにも恥じるべきところは無いさ」 二人の自己紹介が終わる。 しかし、沈黙など訪れず、話題は尽きず、話は続く。 『―――ったくさ。今から僕はこの子の制服を裸エプロンにしようと洗脳作業を始めようとしていたのに。余計な真似してくれちゃって』 そこで、気付いたのか、双識はヒトゴロシの少女を吊り上げていた縄を、近くに落ちていたグリフォン・ハードカスタムで切り裂き、 丁寧にヒトゴロシの少女を受け止める。そのまま地面に置いておいた。 おそらくは貧血か何かを気遣ってのことだろう。――――ならば始めから拘束などしなければよかったのに。 「おいおいおい。禊くん。裸エプロンなんて邪道だよ。あのスカートから見えそうで見えない。そんな緊張感と緊迫感と緊縛感がたまらないんじゃないか」 この二人は何について話しているのであろうか。 恐らく、今後の展開的には何も関係はなさそうなのだが。 「そもそも、裸エプロンは男の夢だのほざいているが、そんなものはほとんどの男はそれをできるわけがない。 そうなってしまったのなら、それは夢ではなく妄想だ。それは私としては望むべくことではないな。勿論人には人の趣味嗜好があるのは認めるけどね。 でもだ、それに比べたらスカートの中身と言うのは非常に現実的で理想的だ。定番こそ一番であり、初心がナンバー1だ。 そこらの痴漢にだって叶えられる夢なんだ。だったら私にだって叶えられる夢ということで同義ではないのかな。 でも、そこらの痴漢と私を一緒にされても困りものだけどね。うふ、うふふ。本当につくづく私の家族には女ッ気が全然全くないのが辛いよ。 家族を辞めるなんてことは絶対ないけどさ。あれは、私の誇りであり、私のただ唯一の仲間なんだから。 ちなみにね。私はスカートという衣服に関してはね、ニーソックスとミニスカでできるあの、神秘の少しだけ見える太ももが一番の至高だと思うのだよ。 そりゃ、パンツだって私は好きだよ。特に女子高校生なんかが着ているパンツ何かもね。でも私はそれでもあの太ももは素晴らしいと思うんだ。 あの張りのありそうで、柔らかさも兼ね備えていそうで、汗ばんだように少し湿り気もあり、それはそれは最高な物だよ。きっと。 私の語彙力では語りつくせない何かがそこにはあるし、あってほしいと私は日々望んでいるんだ。 素晴らしい。素晴らしき新世界。最高だ。太もも最高。抜群だ。効果は抜群だ。神々しい。目が眩む神々さ。 あり得ない。こんなのってあり得ない。神秘。神もが跪くその神秘さ。エロい。下手な裸よりエロい。 なんて言ったところで、その不思議なあの空間のことは禊くんには理解できないだろうな。そこのところどう思う?禊くんは」 『僕はねぇ。やっぱり裸エプロンがいいよね。それで傅かせるのが僕の夢であり、双識ちゃん的に言うのなら妄想だよ。 だってさなんか、僕が上の立場みたいで、見下すのって楽しいじゃん。勝者の様な気分になれて。実際にはなれないから夢なんだよね。 夢は悪夢だけじゃないんだよ。もちろん淫夢だってそうなんだよ?夢精とか出すのはあまり僕の趣味ってわけじゃないけどね。 僕はあのヌけた時の絶頂の気持ちよさよりも、ヌいた後の、何とも言えない虚無感が最高に好きでね。まぁこんな話はこの辺りにしないと規制されちゃうからね。 さすがに世界が週刊少年ジャンプじゃなくたって守らなきゃいけない秩序とかってあると思うんだ。人殺しなんてもってのほかだよね。 でも、人は欲望には負けられない動物だからね。食欲、睡眠欲、性欲、殺人欲エクストラエクストラ。 僕はいつも自分に甘い人間なんだよね♪だからさ。基本女の子だったら誰でも惚れちゃいそうだ。けど、唯一嫌いな女の子がいるけど今回は引っこんでおいてね。 だから僕には特別に好きな部位とかないんだ。けど強いて言うなら、合法ロリな医者とヤンデレの女の子に最近はまっててね。 その子たちの無茶苦茶になる顔見たら、ホントゾクゾクしちゃうよね。――――こんな感じでいいかな。それで観察は終わったかい』 「あぁいいよ。――――――どうにもカッターナイフは忍び持っている様子もないし。それにしてもよく気づいたね」 『僕は他人の目っていうのは気になり過ぎて困っているところなんだけどね。まぁいいや。大事そうなことらしいし覚えておくね』 「禊くんには関係なさそうだけどね」 一応説明しておこう。 こうやって、今までよく分からない話をしていたのは、双識が球磨川禊と言う人物を観察するためである。 ただ一つ、カッターナイフを忍び持っているか否か。それを調べていたのである。 もっと簡単に言うと、球磨川は零崎曲識を殺した犯人か否か。といことである。 人と言うものは何か隠し持っていると、どうも無意識のうちに、その隠し場所を意識してしまう。 それが例え、カッターナイフの様な小型のものでも。もっというのであれば、ただの小石なんかでも同じで。 庇う。視線をやる。ごまかす。慌てる。等など。 だが結果として、双識の診断結果では、そういったものはないと判断された。 ちなみにヒトゴロシの少女に関しては、後で『じっくりと』調べる予定であるという。 「――――で、禊くん。最初の話に戻らせてもらうが、きみは家族に関してどう思うかな」 『家族――――ねぇ。家族って何。 あ、いやいや、忘れるところだった。あの人たちだね。 僕を毎日ひっぱたいてきて、挙句の果てに児童虐待で逮捕されちゃって僕が一人強く育ったと言えば萌えストーリーかな? あぁ、でもなぁ。家族はみんなね、エリートなんだ。だから僕も賢く生きようとしたと言えばもっともらしいかな~。 ん~。こういうのはどうかな。親は何もしなかったんだ。ご飯(えさ)も水も光も何もくれなかったんだ!酷いと思わない!?』 「つまるところ、きみは家族を何とも思わないんだね?」 『うん!そうだね!』 球磨川は清々しい笑顔。 双識は決意の真顔。 「ならばきみは『不合格』だ。――――それでは零崎をはじめ―――よ……う!?」 決め台詞。 決まらなかった。 『おいおい。双識ちゃん。君の目は節穴かい。――――まぁ節穴にしたんだけど』 「大嘘憑き(オールフィクション)」。 それは現実(すべてのもの)を虚構(なかったこと)にする能力(マイナス)。 それは、無関係でも関係なく。無抵抗でも抵抗なく。没交渉でも交渉なく。 意味もなく、台無しにする能力。 誰かの視界とて、その限りでは無い。 「―――――なっ………あ………」 勿論双識は油断をしていた訳では無かった。 むしろ、これから『零崎』を始めようとしていたのだから、警戒に警戒を重ねていたに違いない。 だが、球磨川禊という人間は、《暴力の世界》風にいうのであれば、呪い名。 戦わない人種である。―――――だから勝てない。だから負ける。何もかも。 「―――――呪い名……『死吹』か………いや、この感じは『時宮』?――――いや………何だ、これは」 現在、零崎双識には、視力がない。 いつかの、生徒会選挙編の庶務戦にて、人吉善吉にやったときと同じ様に。 あの時は、思わぬ助け船が出た。 今回、助け舟自体は存在している。 能力制限による、時間制限の存在だ。 だが、そんなこと双識には知るすべなどあるわけでもない。 そういったわけで、行きつく先は、恐怖である。 ―――人は以外でも何でもないが、大半の行動を視力に頼る節がある。 だから、もし、視力が唐突になくなったとなれば、歩くことすらままならない。 この先には何があるのだろう。など、畏怖の気持ちが先回る。 零崎双識という人間は本来ならば、そのようなことは馴れてるとは言わずとも、 そこまで驚くことではないだろう。 ならば何故、ここまで、戸惑っているのか。それは―――――。 球磨川禊という人物が、《謎》だから。 言葉に本心を感じない。 行動に真意を感じない。 能力に仕掛を感じない。 そんな人物に、突如視力を奪われたというのだから、戸惑うだけで済んでいる分、双識は強いと言えるだろう。 『全くさ、人を勝手に『不合格』なんかにしないでよね』 『でも安心して』 『僕は弱い人間と愚かな人間には優しいんだ。あとついでにいうと可哀相な人間とか』 『だから安心して』 『悪いようにはしないから』 「―――――――――ぐっ!」 『でもさ、やっぱりこれだと後味も悪いさ。一つゲームをしようよ』 「ゲーム?」 『そう、ゲーム。あなたが勝ったら、視力を返すのと、そうだなぁ、僕の腕でもあげるよ。 ただし、僕が勝ったら、その視力はもう二度と返さないし、そうだなぁ――――じゃあ双識ちゃんの脚力でも奪ってあげようかな』 「―――――――――ッ!!」 はったり。 球磨川の吐いた言葉はどれもはったり。 虚言。妄言。戯言。大嘘。 一度奪った視力を返すなんて芸当は球磨川にできる訳もなく、腕をあげたところで、なかったことにされる。 視力を二度と返そうとしなくても、時間が経てば勝手に戻って行く。――――ようは双識にこの勝負を受ける義理などさらさらないのだ。 ―――――その事情を知っていたのであれば。 『勿論双識ちゃんに有利な条件にしてあげる。なんたって僕の罪滅ぼし的なゲームだから。 じゃあ、そろそろ、ゲームの内容を発表しようかな。ゲームの内容は』 『僕が少しの間お話をするから、その後、ただ一つ頷けば、双識ちゃんの勝利だ』 「――――それだけか」 『やだなぁ。僕のこと疑っているの?』 「当たり前だ」 『――――ぶぅ。じゃあやらないの?』 「いや、そうは言っていないさ、禊くん。ぜひその勝負をやろうではないか」 そして、また一つ。らしくもなく。ミスを犯す。 ■ ■ 『うん、じゃあそういうわけで試合開始だね。いや、試験開始かな?どっちでもいいけど。どうでもいいし ―――うん、というわけで僕がお話をするのは双識ちゃん大好き、《家族》とかの話しさ。 とはいってもそんな深い事言う訳もないし、気張らずに挑んでね。僕の方が困っちゃうからさ。 で、家族。そう、家族。僕はこれほどまでにくだらないものは無いと思うんだ。だってさ、うざいだけじゃない? 現にさ、僕の初恋の相手もさ、家族なんてくだらないものがあるから僕に構ってくれないし。 酷い話だよね。そんなに家族なんてものが大事かな?過負荷の僕からしたら邪魔以外何者でもないけどなぁ そういえばさ、双識ちゃんの《家族》ってことは皆化物じみた鬼ばかりなんだよね。憎まれ役の僕の立場からしたら迷惑以外何者でもないけどさ。 でもさぁ、週刊少年ジャンプではさ、そういう強いとされる人物ってさ、噛ませ犬になるってのが常套手段なんだよね。 ドラゴンボールのピッコロやべジータ辺りがいい例だよね。最初は強く登場したはずなのに主人公の強さに追い付けなくなって、 最終的に、新たに出てきた強い奴にドガン。――――双識ちゃんの家族はそんなことになってないことを祈るよ。まぁ精々海で気持ち良く泳いでいるのかな。 いいねぇ。そう言う優雅な生活ってさ。僕には不可能なだけに憧れるよね。妬ましくなるよね。それも生まれついた何かだから仕方ないって僕は割り切っているけどね。 そう言う意味ではさ、確かに家族ってさ大事だよね。衣食住。それらを支えるのは所詮所属諸悪家族なんだから。 双識ちゃんはどうだった?………聞くまでもなく君は恵まれてないよね。君から感じる雰囲気は本当は『過負荷』のそれに似ているんだから。 それなのに双識ちゃん、双識ちゃんたちはさなんか開き直って幸せそうに暮らしちゃって。僕としてはよくやった、って誉めてあげたんだけど。 きっと飛沫ちゃんたちは否定するだろうなぁ。結局それは幸せ者だって。感じでさ。そのあたりは限りなく同感なんだけど。 でも現に君たちは幸せそうに暮らしているんでしょ。『幸せ』『そう』にさ。所詮紛いものの最後の足掻きって感じで醜く汚く劣情らしくね。 けど安心してね。そんなんが家族なんだら。変に気を遣い。変に強引使わされ、変にご都合主義な存在が家族なんだから。 今だって、本当は君を殺そうと動いているかもしれないよ。だって殺しやすいしね。いたらの話だけど。 それにさぁ、双識ちゃんは家族の何を知っているの?何を知らされているの?まさか全部はありとあらゆることを家族として信用、信頼して話してくれているとでも思っているの? そんなわけないじゃん。誰にでも話したくない者だってあるし。家族なら尚更だよ。全くもって使えないね、ストレスの逃し口にもならない。 別にピンチに颯爽と助けてくれるわけでもなければ、別に僕たちのことを真剣に考えてくれるわけでもないし、 別に普通に自己中心的な人たちが造り上げるのが家族なんだし、別にいなくたってそんなに変わらないし、 特に親っていう種族は、ただお金という概念から、自分たちが上の立場にいると錯覚しているようだけどさ。そんなのはバイトすればいい話。 もっと極論的なことを言うとさ、殺して奪ってもお金としての価値が下がるわけではないし。僕たちが親を跪かせれば問題は無い訳だ。 そんな形だけな存在なんて僕にとってはいないも同然だし、というかむしろ邪魔だよ。邪魔。 それなのに君は家族を必要とするの?過負荷な君なのに?おかしい話だね。 現実問題それはありえない。双識ちゃんにはそんなことを思えるだけの事に至っていないだけなんだよ。 きっとそれはね、双識ちゃん。君は人恋しがりなだけなんだ。人がいれば誰でもいい。 家族である必要なんてどこにもない。身近にいたのが偶々家族であって、それが僕だったら僕のことをきっと今の家族と同じ様に考えたはずなんだ。 だけど家族にすがり行くうちに、それが大切な物と勘違いしちゃったんだよね。異論は無いはずだよ。心当たりがないともいわせない。 双識ちゃんにとって家族なんてホントはどうでもよくて、どうにでもなればよかったし、どうしようもなかったんだよ。』 『では聞くよ。双識ちゃん。君にとって本当に家族と言う物は大事な物じゃないはずだ。認める?』 そして双識は簡潔に即断で答えた。 「いいや、私にとって家族とは大切な物だ」 その時の双識は、正直にそう答えたと思っていた。 だが、のちに知ることとなる。それはただの意地であって、球磨川の言葉が頭の奥底に螺子込まれたことを。 『あっそ』 逃げた。 球磨川は特に何もせずにただ逃げた。 球磨川は、この場を立ち去った。 もちろん、そのゲームの報酬など、ある訳もなく。 だからといって、罰があるはずもなかった。 つまるところ、意味のないゲームであった。 球磨川は、すぐ近くにある、箱庭学園の門を潜る。 そして、その場には球磨川の影が消えた。 (球磨川禊―――試験開始) (零崎双識―――職務怠慢・処罰執行) (第二話――――了) 第三話 ~貝木泥舟と江迎怒江と球磨川禊~ 江迎怒江――――15,6歳、女の子。 その手は夏でも、何でも腐らす。 背丈は低め。目方は軽め。 生年月日不明。血液型不明。 家族構成不明。 愛情表現を上手にするのが苦手。 惚れっぽいのが少し悪癖。 現在は箱庭学園に転校しており、生徒会選挙に参加している。 彼女の人生は、本人が自覚している通り、杜撰なものだった。 主観的にも、客観的にも極少の幸せがあり、膨大な不幸せ、腐幸せがあった。 ようするに、その15,6年の人生は 確実に、ごく『過負荷』の、ものだった。 ■ ■ 詐欺師の青年たちは現在箱庭学園旧校舎(通称「軍艦塔(ゴーストバベル)」)の捜査をしている。 結局、江迎は、最初に訪れたということもあり、ここぐらいしか思いつかなかった。 「病んでますね」 「お前が言うほどか」 「――――はいぃ?どういう意味でしょうぅ」 「いや、何でもない。捜索を続けてくれ」 「はぃぃ!」 ………しばらく捜査を続けていくにつれて、ある部屋を見つけた。 黒神めだか部屋。そして黒神くじら部屋の事である。 その部屋の全貌はというと、最初に目に入るはこの沢山の人形だろう。 人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形 人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形 人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形 人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形 人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形ニンギョウがニンギョウ。 よほどの特定的な理由でもない限り、いくら黒神めだかや、黒神くじらであるとはいえ、人形化で世間に販売されることなど叶わないだろう。 となれば、黒神真黒のオリジナルの手作りという可能性が高い。――――確かに病んでると言われるのもいたしかたないのかもしれない。 他にもポスターなり、なんなりとあったのだが、それを全て紹介するとなると、時間が足りないという物だ。 なので、一つの戦果だけ持って、この二人はさっさとこの場を立ち去った。 一つの戦果。それは黒神くじら部屋にあった、《ノーマライズ・リキッド》。 生徒会選挙書記戦において、実に無意味でこそあったがその効果は凄まじく、 天才(アブノーマル)を凡人に(ノーマル)に変える劇薬。異常封じの異常殺し。 そんなものが注射器の中に入っていた。 実に恐ろしい話であった。 劇薬を見つけた後、二人は外に出て、次の行動を思案していた。 ここで、球磨川禊に会うこととなる。 ■ ■ 『ふぅん。僕は君みたいな目を知っている。まるで、全てを同じと考える、その目を。 まるで道具の様に。まるで奴隷の様に。まるで下僕の様に。まるで空気の様に。 人をそんな風に見て、そんな風に動かせるその目を僕は知っている。 そうだね…………あの人風に言うのであれば、きっとこう名付けるだろうな。『悪平等(ノットイコール)』って感じだな』 二人の前に、さも当然の様に現れて、当たり前かの様に二人の前でその口を開いていた。 病んだ少女という、元の世界での仲間がいたから。というのもあるかもしれないが、そうでなくてもこの男ならこうしたであろう。 「怒江。こいつは知り合いか?」 「はいぃぃぃぃ。この人は最初に言った球磨川さんですぅ」 「はん。なるほどな。これは確かに確かだな」 『………あれ?なんで江迎ちゃんはこの人の事愛してるっぽいの?善吉ちゃんはどうしたの?』 「何を言っているんですか?球磨川さん。私は最初っから泥舟さんしか愛せれませんし、そもそも人吉くんは敵じゃない」 『……あれはフラグだと思ってたけど人生はやっぱ上手くいかないものなんだね』 「当たり前じゃないですか。球磨川さん。それだから『過負荷』なんですもの」 「――――まぁ、思い出話は他でやってくれ。で、結局俺に何か用なのか」 『いや、別に用ってわけでもないんだけどね。君を勧誘に来たんだよ。』 『何にって、そりゃ-十三組にさ』 「…………怒江、説明を頼む」 「…………一応言っておきますけど、泥舟さんは学生じゃありませんよ?球磨川さん」 『ははっ。やだなぁ。それぐらい見れば分かるよ、見ればさ』 「ではなぜ、俺を誘おうなんて真似するんだ」 『さっきも言ったけど、えー……泥舟ちゃんは僕たちになる素質がある。ただそれだけだよ?他に理由なんているかな。僕たちに』 「いりませんねぇ。私たちですし」 「………ならば、俺に信用させて見せろ。本当に仲間に誘いたかったのならな」 転ばずともただでは済まさない男。貝木泥舟。 一方的な情報交換を要求してきた。 この手際はさすが、と誉めるべきなのか。狡賢い、と貶すべきなのか。 『じゃあ、そうだねぇ。あの校門の前には、意識もはっきりしてない痛た気な少女と、目の見えない可哀相な青年がいるよ』 「まだだ」 『むぅ……。じゃあ………時計台とか行ったかな?僕も詳しくは知らないけど何か面白いものがあるかもよ』 「具体的には、どういう意味だ」 『全くもう、泥舟ちゃんは貪欲なんだから。僕はそういうところにはまったんだけどね。 うん、そうだねぇ具体的には、何かみんな仲良しそうに時計台の中からね。そこで僕は思ったよ。きっと時計台には何かあるとね!』 「―――――怒江。知っていたか?」 「い、いえ。知りませんでしたぁ。すいません………」 「そんな改まって謝罪などしなくてもいい。俺とお前はそんな仲ではないはずだ。 ―――でもな、お前が本当に俺のことを思っているのであれば、その罪滅ぼしとして、急いで時計台まで確認して来てはくれないだろうか」 「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。行ってきますぅぅ!」 走る江迎。 そのスピードはとても水分不足に悩む少女のそれとは思えないものだった。 二人はそんな江迎の姿を見送って、何事もなかったかのように話を再開していった。 その内容にはあまりに意味のないものだらけだったので省略させていただこう。 『それにしても怒江ちゃんもいい人みつけたね』 恋人じゃねぇよ。 (第三話―――了) 冒し、侵され、犯しあう(中編)
https://w.atwiki.jp/toho_yandere/pages/407.html
4スレ目 870リメイク 赤の手記 4月1日 今日は変な人間を拾った。 少なくとも私という吸血鬼の存在とその脅威ぶりは、近隣の人間共には知れ渡っているはずだ―― そう、もし出くわそうものなら、裸足で逃げ出すくらいには。 そうであるにも関わらず、奴という男は私を見ると、能天気に「おはようございます」などと挨拶をしてきたのだ。 ……こういう場合は、二通りのどちらかに分けられる。 私が話に出てくる当人だと思ってもいなかった場合か、そもそも話自体を御伽噺か何かだと信じていなかった場合だ。 稀に咲夜のような例外もいるが、あんなのがそうそういてはたまらない。 いずれにせよ、奴が私のことを正真正銘の吸血鬼だと知った場合の反応を見てみたくなったので、館まで連れて来ることにした。 最近は暇を持て余しがちだったから丁度いい。どんな顔を見せてくれるのか、今から楽しみである。 赤の手記 4月15日 あいつ――○○を拾ってから、早くも二週間が過ぎた。 メイド達の仕事につき合わせたり、パチェと魔理沙が繰り広げている争奪戦に放り込んでみたり、美鈴の訓練の相手をさせてみたり、妹と遊ばせてみたり。 兎に角色んなことを試してみたのだが、終ぞ奴が驚いたり、慌てたりすることはあっても、恐怖を見せることはなかった。 いや、それよりも寧ろ、この館にすっかり順応してしまったように感じる。 メイド達や咲夜からは、仕事の手伝いをマメにしていたせいもあって既に信頼厚く、 フランとは殺されそうになりながらもちゃんと遊んでいたようで、今では懐かれた挙句「兄様」呼ばわり。 肩車しているのを見かけた時は少し羨ましかった。 パチェと魔理沙の争奪戦も、傍にいた小悪魔から事情を聞くなり、雷鳴の如き一喝で魔理沙を叱りつけ、 今後は借りたらきちんと返すという約束を取りつけていた。 ……正座に涙目の魔理沙を見るのは多分あれが最後だろう。 美鈴に至っては、筋が良いので是非とも門番隊にスカウトしたい、と上申してきた。 やけに嬉しそうな顔がむかついたので、断っておいた。 最初はそこらの人間と同じかと思っていたが、完全で瀟洒を謳う咲夜すら感心する非凡ぶり。 何か秘密でもあるのかも知れない。 もう暫く様子を見てみることにする。 追記として、奴の淹れる木苺のジャムティーはとても美味しかったことを記しておく。 咲夜が悔しがっていた。 赤の手記 5月1日 とりあえず近況を記しておくこといする。 ○○を館に雇い入れることになった。 というのも、「いつまでも食客のままでは立つ瀬がない。 働かせて貰えないのならば里へ帰らせて欲しい」とここ最近五月蝿かったからだ。 館へ連れて来る少し前に、里でも仕事を失くしていたばかりだったようで、この話をした時は大層喜んでいた。 笑うと笑窪が出来ることを発見した。 しばらくは咲夜の補佐役にでも充て、腕前次第で仕事を増やしていくことにしよう。 赤の手記 6月7日 肩車をしてもらった!あれはいいものだ……世界が広がる。 また今度してもらおう。 赤の手記 7月14日 今日は危ないところだった。 もう少し夜の散歩にかまけていたら、○○にこの手帳を見られてしまうところだった。 見られた所で、この館の日々が綴られているだけ。 別に構わないはずなのだけれど、どうして私は、見られたくないと思ったりしたのだろうか? ……落ち着かない。 今日はもう寝ることにする。 赤の手記 7月25日 今日は○○が買出しで一日留守にしている。 つまらない。 赤の手記 8月12日 美鈴と組手をしている○○を見かけた。 手加減はされているのだろうが、成程確かに筋はいい……中々に善戦をしていた。 しかし気の扱いや、種族の能力差故か、最終的には負けてしまっていた。 もう少し様子を眺めていてもよかったのだけど、私は部屋へと戻ることにした。 楽しそうに笑う二人を見ていると、胸がもやもやするからだ。 ……イライラする。 赤の日記 9月20日 フランが穴を開けた屋根の修理費、しめて\3.665.000也。 顔は笑っていたけれど、青筋を立てて淡々とフランを叱る○○はとても怖かった。 しかしこの修理費をどこから捻出しようか。 頭が痛い。 赤の手記 12月20日 もう少しでクリスマスだ。 去年までは何て事はない、皆を招いて宴会をしてオシマイだったが、今年は違う。 館で……いや、恐らくいつものメンバーの中で唯一の男性、○○の存在だ。 何処かのブン屋の仕業により、いつの間にか○○は館の内外問わず知れ渡る存在となってしまっていた。 曰く、吸血鬼に一目置かれる人間、と。 確かにその通りではあるのだが、このままではいけない。 面白い事が大好きな、隙間妖怪を筆頭とする面子に、下手をしたら連れ去られてしまうかもしれない。 それは嫌だ。 すごく嫌だ。 何とか策を練らねばならない。 そろそろ○○が本を読みにくる。 ベッドに戻らないといけない。続きは明日にしよう。 赤の手記 12月23日 ようやく決まった。 覚悟もした。 恥ずかしいけれど、やる他ない。 ……これは私の為ではなく、○○に館に残って欲しいという、皆の意見を酌んでの行動だ。 だからこそ、当主である私が動くんだ。 赤の手記 12月24日 今から策を実行に移す。 かみさま、おねがいします。 赤の手記 12月25日 今まで五百年余り生きてきたが、昨日ほど勇気を振り絞ったことは無い。 ○○は私の願いを受け入れてくれた。 お願いをした直後の○○の面食らった顔は中々見物だったが、優しく微笑みながら頭を撫でてくれた、あの温かさを忘れることはないだろう。 それにしても皆して私を茶化すのは勘弁して欲しい。 私はただ、○○にずっとここに居て欲しいと告げただけなのに。 やれようやく言ったかだの、おめでとうだの、散々からかわれてすっかり参ってしまった。 ……でも、かわりに○○がおでこにキスをしてくれたから、皆への不満は帳消しにしておいてやろう。 赤の手記 1月1日 今日は○○の膝の上に座って、彼の身の上話を聞かせて貰った。 彼の家族は誰に対しても等しく優しく、それ故に家は狭い――私の部屋ひとつと同じくらいなんだそうだ! ――けれど、いつも温かくてぽかぽかしているらしい。 一度くらいは見に行きたいとせがんでみたけれど、やんわりと断られてしまった。 残念。 赤の手記 1月22日 ○○の提案で、弾幕ごっこの代わりにフラン達と雪合戦をした。 流れ弾による窓の修理費、しめて\224.000。 咲夜の顔が心なしか引きつっていた気がする。 だからあんなにやり返してきたのか……。 赤の手記 3月5日 今日はとても焦った。 起きたら○○が何処にもいなかったからだ。 思わず寝間着のまま館中を探し回ってしまったが、私の様子を見た咲夜が事情を教えてくれた。 なんでも○○の親に不幸があったとの知らせを買出し中に受けたらしく、咲夜が一日休みをやったとのことだった。 咲夜の前だというのに、安堵のあまりへたりこんでしまった。 こんなにも私を心配させるとは、家臣にあるまじき行為だ。 帰ってきたら一日中傍に置いてこきつかってやろう。 赤の手記 5月10日 数日前より、私の館から姿を消している者がいる。 昨年より新しく雇った執事長の○○だ。 何の能力も持たないただの人間にも関わらず、咲夜と同程度の仕事を淡々とこなし、 里の人間の人望も厚く、確か面白半分で命じた時は白狼天狗と互角の勝負をしていた。 兎に角、ただの人間にしては有望な人材だった。 そんな○○が突然こう申し出てきた。 曰く、数日の休みが欲しい、と。 普段から私によく尽くしてくれていたので、一つくらいは願いを叶えてやろうと快諾した。 しかし、それ以降○○が紅魔館に戻ってきた形跡はない。 咲夜に探させてみたが、少なくとも館にはいないらしい。 手荷物も幾つか無くなっていたそうだ。 里帰りでもしているのだろうか。久しぶりに奴の顔が見たくなってきたことだし、明日あたりこっそり遊びに行って驚かせてやろうと思う。 赤の手記 5月11日 何なんだ、あれは、嘘だ、そんな。 あいつは私だけのものだ。 それ以外は許さない。 赤の手記 5月12日 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない(以下数 ページに渡って同じ内容) 赤の手記 5月13日 昨日までの私はどうやら相当に混乱していたらしい。 はは、私としたことがみっともない。 そうだ、あれはただ女が転んだから○○が支えていただけ。 そう、きっとそれだけのことなんだ。 ○○は優しくて有能だから、主従関係でなくたってそれくらいの事はやってのけるのだろう。 里の者は似合いの夫婦だと話していたが、それも夫婦に見えてしまうくらい自然だっただけなんだ。 ○○はまだ独身だから、そういう相手を探していても不自然ではないしな。 多分幼馴染とかそういった存在なんだろう、あの女は。 明日には○○が帰ってくる。また彼の顔が見られる。 楽しみだ。でも、私の心を乱したあの女については処分しようと思う。 ○○は私のモノだから、所有物の所有物を私がどう扱ったって、どうってことないだろう。 赤の手記 5月1⊿ (ここからのページは赤黒く滲んでおり、読解が酷く難しい。 判読出来たキーワードの中には「裏切り」、「血」、「従僕」などといったものが含まれている) 赤の手記 7月14日 ○○は、わたしだけのものだ。 だれにもわたさない。 ずっと。 ずっとこの館で暮らすんだ。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/537.html
禿「師よ・・・どうか安らかに・・・」 空を見上げポツリと呟く あぁ、イエさんに続き貴方まで失う事になるとは・・・・・・ 禿「大丈夫ですか?」 太郎「はい、貴漢のお陰で助かりました・・・・・・」 口では大丈夫と言ってるものの恐らくは辛いのだろう・・・私だってキツいのだ 禿「状況はあまり良いとは言えないでしょう・・・・・・『夢の国』、それに『鮫島事件』とは・・・」 太郎「彼も無事だと良いんですけど・・・・・・」 このまま手をこまねいてる訳には行くまい・・・ 禿「我々にはもう戦う力が残されていません・・・」 太郎「悔しいけど、その通りです・・・」 禿「ですが、何もしない訳には行かないでしょう・・・・・少し下がってください、奥の手を使います」 まさか、アレを使う事になるとは・・・できれば使いたくなかった・・・ 禿「ハァァァァァッッ!!」 残された兄気を全て解放する!! 禿「来たれ!我が歴戦の盟友達よ!!」 金色の兄気が空気中に散って行き、蜃気楼の様に大気が揺らめき、兄気は人の姿を象って行く かつて契約していた盟友達へと・・・ 太郎「これは・・・・・・」 禿「私の奥の手・・・かつて契約していた、そして今は一つとなっていた都市伝説達を解放する力・・・」 この身一つで戦うことを信条としていた私の奥の手 そう・・・ 禿「 裸 漢 招 来 !!」 その叫びと共に完全に顕現を果たすかつての盟友達!! 『青いツナギの良い男』や『エイズ・サム』達が私の周りにひしめく 禿「盟友達よ・・・行きなさい!!」 ガチムチ兄貴達「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」 太郎「あんな・・・たくさんの都市伝説と契約していたのですか・・・?」 禿「類似した都市伝説ですし、ほんの40人ほど・・・大したことはありませんよ」 頼みましたよ、盟友達 どうか、私の代わりに町を救ってください・・・! この後、学校町内で全裸のガチムチ男の目撃情報が相次ぐこととなるが 割とどうでも良い話である 前ページ次ページ連載 - はないちもんめ
https://w.atwiki.jp/smorkingsmorking/pages/102.html
かなり長くなっているため、全体評だけをひとまずアップする。各論については後日。 著者紹介 著者は鈴木健。SmartNewsの設立者の一人で、最近Forbesの起業家ランキングで二位に輝いた人である。 起業家ではあるが、元々は電子貨幣や地域通貨などの情報系研究者で、スマートニュースなども研究の一環として設立した(結果大成功)。 本書概要 さて、『なめらかな社会とその敵』(*1)は、この鈴木の思想を明らかにし、その未来構想を明らかにするものである。その核心は次の言葉にある。 この世界に境界が引かれていることへのナイーブな違和感、少年時代のそうした原体験の多くを、人々は忘れてしまう。世界をあるがまま観ることはもはや許されず、他の人がそうであるように世界を単純化して観るようになっていく。 (ⅱ) 彼の原体験は、ベルリンの壁であった。可視化された、コンクリートの境界線。境界線こそなければ流れなかったであろう血。そして世界を分割するのは物理的な壁だけではなく、人間の心の中にもある。むしろ、境界線を作ることは生命の本質でもある。リソースを囲い込んで自らのものとし、世界を分割することで認識を可能にする(ii)。しかし、それは時に暴力をも生み出すのだ。もし境界線がなければ、境界線をなくせば、暴力は生み出されないのではないか。彼はそう考える。 ではどうやって境界線をなくすか?そもそも境界線はそんなに固定的で、何者をも通さない厚いものなのだろうか?そこで鈴木は、細胞のアナロジーで世界を捉えることで、境界線が越えうることを根拠づけようとする。【核】、【膜】、そして【網】。 【核】とは、中央集権の象徴である。中央集権的な組織に満ちあふれる現代社会(8)、他者を認識し、資源・他者を制御する自己(15-18)の象徴である。 【膜】は、境界線である。【核】は、【膜】によって資源を囲い込み(8)、自己の所有物を確定する(18)。 これら【核】、【膜】を生み出す複雑な反応ネットワークが、【網】である。【核】や【膜】は仮の姿あるいは一時的な現象として生まれるのであり、それは全体そのものではない(19)。もしそうなのであれば、【核】や【膜】が人間の生み出した現象に過ぎないのであれば、それらを変えることも、なくしてしまうことも可能ということになる。【膜】をなめらかにし、世界がネットワークであることを認識することも、越境することも可能ということになる(19)。それはかつてであれば不可能であった。人間の認知能力には限界があり、だからこそ、【核】と【膜】によって世界を単純化してとらえようとしたのである。しかし今では、なんらかの技術的な方法によってその限界を突破することができるかもしれないのだ(45)。なぜならば、オートポイエーシスとしての生命システム(人間)は、外部の環境と相互作用し、環境を変えながら自らも変容させるからである。 我々は技術によって環境を作り替えることで、我々の認識能力をも変えることができるのだ。であれば、技術革新によって、世界を単純化しないままに認識できるようにもなりうる。それが、「なめらかな社会」である。それは、多様性のない「フラット」ではなく、非対称な関係が非連続的であり、その間に断絶がある「ステップ」でもない(39-41) そして、鈴木はこの『なめらかな社会』を実現するための4つのコアシステム――貨幣システム(伝播投資貨幣PICSY)、投票システム(伝播委任投票)、法システム(伝播社会契約)、軍事システム(伝播軍事同盟)を提案する(ⅲ)。 全体評 決して易しい本ではない。理由は二点有る。一つが途中出てくる数理的モデルなどを理解するのがかなり難しいこと。これは微積分すらもうなさっぱり思い出せない俺が悪いともいえるのだが、俺みたいな奴は一杯いるだろう。ただ、本書における数理的モデルは、筆者自身が読み飛ばしてくれてよい(69)との旨を記述しているため、理解せずとも特に問題はない。 もう一点が、鈴木の言う『なめらかな社会』の構想自体が、我々の認識している現実からあまりにも乖離しているが故に、イメージが非常に難しことである。大まかに、鈴木が何を言いたいのか、をつかむのはそこまで難しくない。国家、制度、そして人間、それらを分かち、その支配範囲を画定する境界線を、境界線自体を残しつつも、より越えやすい境界線にしていく。これが鈴木の構想する「なめらかな社会」である。しかし、このイメージはあくまでも「なめらかな社会」という社会構造についてのイメージであって、「なめらかな社会」に生きる人間についてのイメージではない。このことが、第三章以降の各論を読む上で問題となるのだ。 伝播投資貨幣PICSY、伝播委任投票、伝播社会契約、伝播軍事同盟。これらは社会制度であり、これらの総体が「なめらかな社会」の社会構造となるのだが、これら社会制度を使うのは人間である。しかしそれは現在生きる我々とは違う認識能力を持つ人間である。それゆえ、これら社会制度について検討する際に、我々がこれら社会制度を用いるかのようにイメージしてしまうと、これら社会制度を理解することができない。そのようにイメージしてしまったならば、鈴木に対して論点を間違えた無意味な非難を浴びせることになるだろう。 では「なめらかな社会」に生きる人間はどのような人間なのだろうか。私自身もその正確な理解ができているのかには自信がないが、おそらく、その端的な例となるのが「統合失調症」であろう。鈴木は、これまでの近代社会が前提としてきた、「自由意志をもった一貫した自己」というイメージを否定する(174)。かわりに提示されるのが、ドゥルーズの「分人」概念である(134-135)。鈴木は、この「分人」を、近代的な個人にかわる政治・社会の最小単位として扱おうとする。 頭のなかをかけめぐる複数の異なる声、これこそが分人たちの声である。これらの声は矛盾し、会話し、ときに溶け合うこともある。ちょうど自分の腕を他人の腕だと信じて疑わない自己身体失認と同様に、自分の脳の中の声も他人の声として聞こえてしまうのが統合失調症によくある幻聴の症状である。それはら宇宙人や神の声として解釈されることさえあった。(174) 現代社会においては、これら分人たちの声は、「責任を要求される」などの手段によって、一貫性のある一つの自己として結晶化される(174)。一方、鈴木の構想では、この「自己の結晶化」が拒否される、「身体が生み出す矛盾した声を、矛盾したままはき出す」(174)。「分人民主主義が大事にする規範と倫理は、身体から生じる自然な声や情動を重視し、個人の中、組織の中、国家の中の矛盾を理解し許容する文化である」(175)。 鈴木の「なめらかな社会」は、このような分人を前提としている。伝播投資貨幣PICSY、伝播委任投票、伝播社会契約、伝播軍事同盟。これらを利用するのは分人であり、現代社会で前提とされ、我々もまたそうであるような「個人」ではない。このことを理解しないまま本書を読むと、間違った理解にたどり着く。例えばであるが、山形浩生による書評、鈴木『なめらかな社会とその敵』ヒース『ルールに従う』:社会の背後にある細かい仕組みへの無配慮/配慮について、あるいはツイッターでなめ敵とかいって喜んでる連中はしょせんファシズム翼賛予備軍でしかないこと。これを読む際には注意しなければならない。 この書評においては、本書で重視される「関係性」がめんどうなしがらみでもあること、「なめらかな社会」とはそのような関係性を重視する閉鎖的農村社会であること。PICSYが社会貢献度に応じた新たな階級社会を生み出すだろうということ。分人民主主義の分割投票が、投票者個々人の責任を問わない、ナンセンスで無責任な制度であること。「なめらかな社会」における近代個人観の否定は自由、平等、プライバシーをも全て否定してしまい、究極の全体主義と化すること。これらを指摘する。しかし、これらの指摘は、鈴木に対する批判としては全く的を外している。この書評にも記述があるが、 むろん、真になめらかな社会は人々の自由も平等もプライバシーも必要としないのかもしれない。すべてはつながりあった一つの「自分」であり、それ以下の個体など考慮しないのかもしれない。これは著者がかなりはっきり述べていることだ。著者は、国家と個人だけが突出して(つまりなめらかでない形で)重みを与えられている現状を批判し、会社、コミュニティ、地域などにそうした主体としての意味づけを分散させることをこのシステムで目指したいと述べている。これはつまり、個人というものに与えられている意義や権利、たとえば自由や平等やプライバシーなどの重み付けも下げると言っているに等しい。個人の価値付けも、いまはデジタルだ。人間だから固有の価値と権利がある、というわけだ。でも、なめらかさを追求する鈴木のシステムはそんなデジタルな断絶は許さない。人間の価値だってなめらかに変化する。結果的にそこには、価値の高い人、価値がその半分くらいしかない人、まったくの最低限の人間といった人間としてのランク付けがなめらかに生じる。人々に潤いを与え、なごやかにし、ネズミをたくさん捕った近所のどら猫より価値の低い、本当に猫にも劣る(しかもそのおとり具合を数値的に示されてしまう)人間がたくさん生じる。(山形 2013) 鈴木ははっきりと述べているのだ、人々の自由も平等もプライバシーも必要ではないと。ゆえに、「なめらかな社会」が究極の全体主義に至ったところで、鈴木にはなんの不都合もない(*2)。「なめらかな社会」の全体主義性に拒絶反応を示す人間は、あくまでも現代社会の人間である。「分人」であれば究極の全体主義たる「なめらかな社会」を、特になんら疑問を抱くことなく受け入れる、そのように想定されているのだ。 本書が全体主義の書であることは、事実であろう。その意味で山形の批判は正しい。しかしそれは本書に対する批判にはならない。本書を絶賛する人々を「ファシズム翼賛予備軍」と呼んだところで、彼らには何らダメージをもたらさない。山形は「本書が誤っていること」を指摘したのではない。山形は「「ファシズム」や「全体主義」という言葉の持つ悪いイメージを用いて、本書と本書のフォロワー達を非難する」だけである。 本書の誤りを指摘したいのであれば、次の3つの道をとることができる。一つは、「なめらかな社会」が前提とする諸概念を否定すること。「分人」やら「核、膜、網」といったものを否定すればいい。そうすれば「なめらかな社会」は崩壊する。もう一つは、鈴木の提示する社会制度が、「なめらかな社会」に寄与しないことを指摘すること。PICSYやら伝播委任投票などを導入したところで、社会はなめらかになどなりはしない、といえばいい。最後の一つは、理念的批判である。「なめらかな社会」そのものが、「正しい社会」なるものから外れていることを指摘すればいい。山形はこの三つ目の道をとるが、「全体主義に対する現代人の持つ悪いイメージ」をその根拠としているところに大きな欠陥がある。一応山形はヒースの『ルールに従う』を引きながら、本書を「一見粗雑さに見えるものが保存していた社会的な価値をまったく顧みることなく、きわめて単純な理念だけを乱暴に適用した社会システムを構想してしまった」(山形 2013)ものとしているが、これも本書の立場からすれば「だから何?」としかならないだろう。 さて、ここまで本書の擁護論を書いてきたわけだが、私自身は本書の「なめらかな社会」には賛同しない。「関係性」を重視するという本書の視点には賛同するものの、そのためにはむしろ、ある意味で社会をより「ステップ」にする――内と外の断絶をより強くする――べきだと考えるからである。本書の主張が「ステップな社会をなめらかな社会に」だとすれば、私の主張は「なめらかな社会をステップな社会に」である。本書の認識と異なり、現実の現代社会は、既にかなりなめらかな社会である。Twitterやフェイスブック、グローバル企業、タックスヘイブン、環境問題、グローバル経済、移民。既に一国家によって、または一組織によってのみ決定できる領域のほうが小さくなっている。 本書が執筆された当時には想定されていなかったであろうが、現在においては、福祉排外主義政党が支持を集め、またイギリスではブレグジット、アメリカではトランプ大統領の誕生と、反グローバリズムの潮流が力を持っている。この現象を、本書の言葉に即して言い換えるならば、現在では、無視できない数の人々が、国家の膜が薄くなってくことに耐えられず、むしろ膜を厚くし、核を強力にし、網を見ないようにしようとしている、ということになるだろう。彼らは分人ではないため、なめらかな社会に耐えられないのは必然である。 しかし、現代社会の人間は、どうすれば分人となれるのだろうか。本書の答えは不完全である。システム(人間)と環境の相互作用たる構造的カップリング。技術によって人の認知能力を変容させる。そしてそのための諸制度を本書では提案した。しかし、これらによって実際に人間がどのように分人となるのかは、本書に記述されてはいない。構造的カップリングは神秘化されてしまっており、それら社会制度が「なめらかな社会」を作り出せるのかは自明ではないのだ。 であれば、「こんな面倒なシステムを作るまでもなく、勝手に近所づきあいをふやし、親戚づきあいをすればいいだけではないか?」(山形 2013)。山形は――本書で想定されている関係性が、近所づきあいや親戚づきあいのような「近い」関係性ではなく、ソーシャルネットワークという「遠い」もしくは「弱い」関係性であることを見落としているものの――この点についてはいみじくも指摘している。なめらかな社会を作り出す制度を実現することよりも、現代社会の既存の制度を強化するほうがたやすく、さらに、各人が自らの関係性を強化していくほうがはるかにたやすい。そもそも、自らの隣人との関わりを充実させることなしに、地球の裏側の人々との関係を意識することなど、できるのだろうか。 参考文献 山形浩生(2013)「鈴木『なめらかな社会とその敵』ヒース『ルールに従う』:社会の背後にある細かい仕組みへの無配慮/配慮について、あるいはツイッターでなめ敵とかいって喜んでる連中はしょせんファシズム翼賛予備軍でしかないこと」https //cruel.hatenablog.com/entry/20130326/1364268478(2018/12/19最終閲覧) (2018/12/19)
https://w.atwiki.jp/sorasouyo/pages/174.html
579 代打名無し@実況は野球ch板で sage 2008/10/21(火) 18 23 22 ID i/y6247X0 MBS 岡田、大矢監督続投に驚く 横浜の知り合いの関係者を「おいちょっと来い」とベンチ裏に呼び出し、理由を問いただす 580 代打名無し@実況は野球ch板で sage 2008/10/21(火) 18 25 32 ID Rgw9s/XV0 大矢電撃辞任?来た!来た! (来期の横浜優勝に)期待してもらって結構です 581 代打名無し@実況は野球ch板で sage 2008/10/21(火) 18 27 55 ID nWYygn990 ★おいちょっと来い もしくは ★おいちょっと来い(とベンチ裏に呼び出し、理由を問いただす) 582 代打名無し@実況は野球ch板で sage 2008/10/21(火) 18 29 29 ID i/y6247X0 正確にはこうみたいです MBS 大矢監督の続投が決まった時に、驚いた岡田監督は懇意にしている横浜のコーチをわざわざ呼んで、 「おい、横浜はどないなっとるんや」と問いただした 583 OOY sage 2008/10/21(火) 18 31 17 ID F9wCi3cv0 何でそんなことを、ぞく投のあれを、言われなくちゃならないんだ! 10日前 806 代打名無し@実況は野球ch板で sage 2008/10/12(日) 21 51 01 ID c3XnpaKy0 横浜大矢明彦監督(60)が試合前、阪神岡田監督が球団に辞意を申し出たことについて触れた。 「昨日(11日阪神戦)のメンバー交換のとき、辞めると言われたよ。いろいろ大変だったみたいだよ」と話した。 今季、両チームの対戦では死球を巡る“遺恨”もあったが、2シーズンを戦った敵将を思いやった。 http //www.nikkansports.com/baseball/news/f-bb-tp0-20081012-418476.html 何か(危機感が)足りんな
https://w.atwiki.jp/idatenhistorimateri/pages/25.html
前畑秀子:「いだてん~オリムピック噺~」 史実での「前畑秀子」 前畑秀子の史料・文献・書籍文献検索の時の注意 『前畑ガンバレ』 『婦人公論』手記「泳いで、泳っで、泳ぎぬいて」 『文藝春秋』特別再録「オリンピックの英雄たち」 関連人物 関連項目 登録タグ 前畑秀子:「いだてん~オリムピック噺~」 演:上白石萌歌 神宮プールのこけら落としで開催された「極東大会」の平泳ぎで日本新記録を打ち立てた、若干16歳の少女。 名古屋の豆腐屋に生まれたが、両親を早くに亡くしてしまう。 それでも「椙山女学校」の校長の計らいで学校に通いながら水泳を続けていた。 やがて「ロサンゼルスオリンピック」に代表選手として選ばれ、銀メダルを獲得する。 しかし、それは「水泳選手・前畑秀子」の人生の始まりであった。 史実での「前畑秀子」 日本女性初のゴールドメダリスト。 アナウンサー「河西三省」による「前畑がんばれ!!」の名実況と共に有名となっている。 「いだてん」では河西三省による実況と共に、 東京市長・永田秀次郎からの叱咤激励 1日に二万メートルもの距離を泳ぐ猛練習 親が枕元に立つ(改変あり) ベルリンオリンピック決勝戦前に御守りを飲み込む(改変あり) など、その過酷なオリンピック水泳選手としての人生が綴られた。 その一方で「オリンピックのメダルと結婚、どっちも手に入れた日本で初めての女性」であったことなど様々な逸話が省略されているので、書籍や映像などで「前畑秀子の人生」を読んだり観たりする事をお勧めする。 前畑秀子 - Wikipedia 前畑秀子 | NHK人物録 | NHKアーカイブス 椙山歴史文化館シリーズ「金メダリスト・前畑秀子を知る」- YouTube 例えば「いだてん」放映後、「歴史秘話ヒストリア」にて「前畑秀子」が特集され、NHKオンデマンドにて視聴が出来る。 歴史秘話ヒストリア|「前畑がんばれ 誕生!女性初の金メダル」- NHK 歴史秘話ヒストリア 「前畑がんばれ 誕生!女性初の金メダル」-NHKオンデマンド #歴史秘話ヒストリア #いだてん「前畑がんばれ 誕生!女性初の金メダル」 まとめ - Togetter そして故郷の和歌山県橋本市では「前畑秀子の資料」を展示している展示館がある。 前畑秀子・古川勝資料展示館 - Google 検索 わかやま新報|前畑秀子に脚光 日本女性初五輪金メダリスト 和歌山から支える五輪:/4 橋本の誇り、広く発信 水泳で金メダル、前畑・古川の偉業紹介/和歌山 - 毎日新聞(有料記事) 前畑秀子の史料・文献・書籍 文献検索の時の注意 前畑秀子は金メダル獲得後、結婚改姓し「兵藤秀子」と名乗っていた。 そのため「兵藤秀子」名義の文献や書籍もいっぱいあるので、検索する時には気をつけること。 「前畑秀子」検索結果 - 国立国会図書館デジタルコレクション 「兵藤秀子」検索結果 - 国立国会図書館デジタルコレクション 『前畑ガンバレ』 『前畑ガンバレ』兵藤秀子 著|文学の扉2 金の星社:Amazon 前畑秀子が「兵藤秀子」となり、水泳指導者となった時に著された児童書。 ひいては「前畑秀子の自伝」となる。 両親を亡くし、校長たちの支援により競技生活を続け、ロサンゼルスオリンピックに出場し銀メダルを獲得。しかし永田秀次郎や多くの日本人に叱咤激励されてしまい戸惑うも、枕元に立った母親の言葉により「頑張るんだ!!」という言葉と共に一転奮起。1日二万メートルもの猛練習の末、ベルリンオリンピック代表となり、プレッシャーに堪えつつも御守りを飲み、ゲネンゲルとの戦いの後、金メダルを獲得した。 これらの内容により、「いだてん」第36話「前畑がんばれ」を始めとした「前畑秀子物語」の基となったと考えられる。 その一方で「いだてん」では省略された、椙山女学校での支援の詳細な話や他の兄弟たちの話(特に大変だったのは長兄であったそうな) そして「鶴田義行」との逸話が綴られている ていうかこれが「いだてん」ツルさんに対する「憧れ片想い」の元ネタなんじゃね?説をですな(・ω・) 『婦人公論』手記「泳いで、泳っで、泳ぎぬいて」 『いだてん』で話題! 金メダリスト・前畑秀子の手記「泳いで、泳っで、泳ぎぬいて」|婦人公論.jp ベルリンオリンピックで金メダルを獲得し帰国した後、水泳界を退くに当たって寄稿された文。 早世してしまった亡き友への思いなど、「いだてん」とは異なる視点で描かれている。 『文藝春秋』特別再録「オリンピックの英雄たち」 1964年東京オリンピックの前年に、雑誌『文藝春秋』に載った対談記事。 金栗四三、高石勝男、鶴田義行、織田幹雄、南部忠平、宮崎康二、小池禮三、古橋廣之進、河西三省、などなどなどと「兵藤(前畑)秀子」という、そうそうたる面々が一堂に会した対談記事となる。 「いだてん」及び2020年東京オリンピックに合わせる形で再録された。 「文藝春秋digital」で読む事が出来たり(有料部分あり)(後編はこれから更新されます) 特別再録「オリンピックの英雄たち」(前編)|文藝春秋digital 特別再録「オリンピックの英雄たち」(中編)|文藝春秋digital 実は国会図書館に行けば、原文であるデジタルデータが読めたりする。 『文芸春秋』41(7)「オリンピックの英雄たち」 - 国立国会図書館デジタルコレクション そしてこの中で兵藤秀子こと前畑秀子の、ロサンゼルスとベルリンでの思い出話が語られている。 そして中編の終盤(有料部分)にベルリンオリンピックと河西三省の談話が載っている。 更に言えば意外な人物が意外な形で登場するので、一読をお勧めする。 (まだまだ追記します。) 関連人物 小島一枝 松澤初穂 白山広子 鶴田義行 河西三省 関連項目 ロサンゼルスオリンピック(1932年) ベルリンオリンピック 東京オリンピック(1964年) 登録タグ ベルリンオリンピック ロサンゼルスオリンピック(1932年) 前畑秀子 小島一枝 松澤初穂 河西三省 白山広子 鶴田義行 ↓イイネ!!はこちら↓
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/27.html
初秋、雨上がりの境内にひとつ、月を眺めている影。 表情はおぼろげで、彼女が何を考えているのかは読み取れない。 「…………」 ただ眺めているだけなのだろうか… それとも何か想う事があるのか…… たったったったっ…… 軽やかに階段を昇ってくる音がする。 こんな時間に誰?と思ったが、身を隠す間もなくその人は現れた。 「…ったく、この俺が忘れ物をするとは…これも全部あの夕立のせいだな」 「……圭一ですか?」 「ん?あ、あれ?羽入?なんでこんな所にいるんだ?」 「あぅ、それはこっちの台詞なのですよ」 「ああ、今日の放課後、ここにみんなで集まっただろ? ほら、来週十五夜も兼ねた秋祭りの打ち合わせで、って、 んでそのときに弁当箱の入ったバッグをうっかり忘れちゃってさ、 別に明日でもいいかなとか思ったんだけど、母さんこういうのにうるさいんだよ」 「あぅ、そうだったのですか…」 「たぶんどっかにあると思うんだけどなぁ……」 「あぅあぅ、圭一の探してるのはこれですか?」 実はさっき、境内を軽く散歩した時に見つけていた。 知らないふりをしてそのままにしておこうかと思ったが、 良く見たら圭一のかばんだったので、明日にでも学校で渡してあげようと思い持っていた。 「あ!そ、それそれ!うおぉ!ありがとうな羽入!もし見つからなかったら どうしようかと思ってたぜ」 「あぅあぅ、圭一は結構うっかりさんなのですね」 「いやぁ、ははは……うん、そうかもな、でもほんとにありがとな」 ふっ と、圭一の手が伸びて僕の頭をわしゃわしゃとなでた。 されるがままに身を任せていると、圭一の小指が僕の角に軽く…ふれる。 すりっ 「あぅっ!」 「ん?」 「あ、あぅ、ご、ごめんなさいです、変な…声出して…」 圭一たちはコレをアクセサリーだと思ってくれてる。 …もし、コレが角だってばれたら…みんなはどんな顔をするんだろ…… ひょっとしたらもうみんな分かってくれてるのかも知れないけど……けど、 それはみんなが僕に気を遣ってくれてるだけかも……でももし違ったら? 僕はいったいどうしたらいいのかわからない。 でもたぶん…すっごく悲しくなると思う。それだけはわかってる。 120 :名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 22 59 36 ID V2nRt42z おもわず月を見上げた。 こんなものなければいいのに みんなにはないのにぼくだけ じゃああそこにかえればいい いいえそんなのはもういやよ 「…羽入?」 「…なんでもないのですよ…あぅ…」 鳴き虫たちの声がやけに大きく聞こえる。 「……圭一、もし圭一が僕を赦してくれるのなら、僕は話します」 「?」 「僕は圭一にひどいことをした事があったのです…でも圭一はその事を 知りません、だけど…もし圭一が僕を赦してくれるのなら……僕は話します」 「……なんだかよくわからないけど、許すもなにも、羽入が転校してきてから、 一緒に部活をして、楽しく遊んで、…そしてあの戦いをみんなの力で超えた、 そんな仲間の1人の羽入の事を信じないわけがないじゃねぇか。羽入だってそうだろ?」 「あぅ…そうでした……僕もみんなと初めて出会えてからずっと…信じてきました」 「はは…なら簡単な事じゃねぇか」 「あぅ…そうですね…簡単な事なのでした……聞いてくれますか?僕の話…」 「ああ、何でも受け止めてやるよ」 賽銭箱の前にふたりで並んで座る。 圭一は僕の方を向いて、そして僕は上を向いて。 独り言のように話しを始めた。 121 :名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 23 00 13 ID V2nRt42z 「実は…僕は……あぅ…何から話し始めたらいいかわからないです…」 「あはは、あるある、そうゆうのって良くあるよな」 「……じゃあまずは…僕の正体です」 「ん?」 「僕は…ヒトではありません」 「…………」 「ずっと…ずぅっと昔にこの雛見沢に来ました」 「ちょ、ちょっと待て羽入!…それってどういう……」 構わず続ける。 僕が実際に過ごしてきた年月、過去の出来事、記憶。 楽しかった事、嬉しかった事、悲しかった事、つらかった事…… 僕のせいで圭一の身に起こった惨劇の事………… 圭一の声に構わずただ喋り続けた。その間もただ上だけを見続けていた。 「…そして、今までこの村を1人で見守ってきたのです……実は転校してくる前から みんなのことは知ってたのですよ、あぅあぅ、だまっててごめんなさい」 「……そうだったのか」 「…赦してくれますですか…僕のこと……」 「許す!」 「あぅ…」 即答だった。 「んー、っつうか許すもなにも最初に言ったろ?『信じる』って、それに 俺は、仲間の事はちゃんとまじめに聞くし、何でも受け止めるぜ!」 歯を見せて笑う圭一。あぅあぅあぅ、かわいい……どきどき… …実はさっき、圭一に角を触られたときにちょっとした身体の変化が起きていた。 もうすいぶんと長い間、他の人に触られた事などなかったから……その…… なんか……おなかの…奥が……へんな感じ…あぅ…… 122 :名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 23 00 50 ID V2nRt42z 「あぅ…ありがとうなのです…圭一に赦してもらえてなんだか安心しましたのです」 「そうか、羽入が安心してれたんなら、俺も少しは役に立ったって事かな?」 「もちろんなのです!……でも……まだ圭一にお願いしたい事があるのです……あぅ…」 「おう!もちろんいいぜ!何でも言ってくれ!」 「……いて……ください…………」 「え?!い、今…なんて……?」 「あぅ…抱いて…欲しいのです、僕を」 「えぇえぇえええ!!!!!!」 「あぅあぅいやなのですか?…やっぱり僕がヒトじゃないから……あぅ…そうなのですか?」 「い、いやそうじゃねぇ!おまえ…抱くって事、意味分かって言ってんのか? 羽入が人間じゃないとか、そういう事でもねぇ!それに理由がねぇよ!」 「理由ですか?」 「ああ!俺が羽入を抱く事の意味だ!」 「……僕の……ヒトへの憧れ……僕が……此処にいても良いという……証」 「……あ…」 「……それだけじゃ……だめですか?」 するり 袴の紐をゆるめる。 するすると音を立てて解かれていく。 ぱさり と、地面に落ちる。 誰もいない境内で下半身を露わにしたままの羽入がいる。 月明かりで照らされた、真っ白な下部の秘裂が、てらてらと、輝いている。 「…それに…さっき圭一に触れられたときから…ずっと…こんな状態なのですよ…」 圭一の視線が一点に釘付けにされる。 つばを飲み込む音まで聞こえてきそうな静寂の後 「……やっぱり……俺……」 すっ 「…んん…ちゅ……んふぁ……」 「おわ!」 いつの間に目の前に来ていたのか、羽入がキスをした。 「あぅあぅ……隙だらけなのですよ圭一……あう……」 「羽入……」 「あぅ…お願いします…あんまり僕に恥をかかせないで欲しいのです…それに……」 羽入の手が圭一の股間に触る。そこはもうすでに固く張り詰めていた。 「…ほら、圭一も……いいよって、言ってるのですよ…あぅ」 123 :名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 23 01 21 ID V2nRt42z ジ…、ジジ……、ジーー ズボンのチャックを下ろしていく羽入。 やがて屹立した股間が表に出される。 圭一の股間は夜気にあてられ、ひんやりと感じた。 それを慈しむように羽入は手に取り…口へと運んだ。 「あむっ……ぺろ……ちゅっ…ちゅちゅ…ぺろ…ちゅ……」 「お、おい…羽入……くあ……」 「はいほょうふ……ちゅぱっ…ふぅ…男の子の喜ばせ方は知ってますですよ……あく」 圭一にとってフェラチオは初めての行為だった、というか女の子とこういう事をした経験が 無いのだから何でも初めてという事になる。 羽入に股間を口淫され圭一の脳髄に衝撃が走る。 「あ、ああぁ…くぅ…わかっ……わかったから……」 「はひ?はんでふか?ちゅぷっ…ちゅ…ずっずずっずっ……ちろ…」 「も、もういいから…今度は…俺から……」 「あぅ?……ひゃっ?!」 ぬりゅ…ちゅく…… 圭一の指が羽入の秘裂にやさしく…そっと…触れる。 もうそこはすでに十分に濡れそぼっていた。 ゆっくりと割れ目に指を縦に繰り返し往復させる。 つぷ…ぴちゅ…ぴちゃ…ちゅくっ…ちゅくっ…… 淫靡な音を立てて羽入の割れ目から止まることなく雫が垂れてくる。 「あぅっ!…あぅ…はぅ…はぁ…あうぅ……い、いや、は、恥ずかしいのです…」 すりっ…ぴちゃっ… 「そうか?……でも…………気持ちいいんだろ?」 ちゃぷ…… 「あぅあぅ…あうぅ…っはぁ…は、はい……」 「なら、良かった…俺…こういう事、その…初めてで……」 「あぅあぅ…圭一はとっても上手なのですよ…あ、はあぁあ…あぅぅ…あぅっ!」 「……ありがとな」 124 :名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 23 01 51 ID V2nRt42z 羽入が脱ぎ捨てた袴の上にそっと横たわらせ、すっ、と、圭一は顔を下部に近づけていく。 ぺろっ 「け、圭一?!…な、何をするのですか!……だ、だめなのですだめなのです! そんなとこ……き、汚いから……あうぅっ!!はぁっ…はぅっ……あぅあぅあぅ……」 ぺろ…ぴちゃ…ぺろ…ちゅく……ぴちゃ…ぴちゃ……くちゅ… 滾々と湧き出る雫を掬い取るように圭一は舌で舐め取っていく。 れろっ…じゅぷ…… 「あ、あぁああ!あぅぁぅ…はぁあぁ…うっく…うぁ…あぁっ!!」 ぴちゃ…ずずっ…ぴちゃ…ちゅぅっ…ちゅっ…ちゅちゅっ…ずっ…… 舌の動きはより激しくなり、時たま割れ目の上部に生えている突起にも触れる。 それに気付いた圭一は、一番敏感な突起をいやらしく音を立てて吸った。 ちゅぅ……ちゅちゅ…ちゅっ…ずちゅ……ずっずっ……ずるぅっ…… 「ひゃあぁあああ!も、もう……だ、だめ……あぅぁああぁーーーっ!!!!」 圭一に舐めまわされて達した羽入はぐったりとしたまま圭一を見つめる。 「はぁっ、はぁっ……圭一、も、もういいから……来て…ください……」 圭一は目で頷き、先ほどから衰えていなかったモノを ぴとっ と、羽入の割れ目に添え、ゆっくりと、ゆっくりと、埋没させていく。 ぬぷっ…ぷっ…ずずずっ……にゅぷっ…ずず……ずっ あまり発達していない身体のせいなのか入り口が、きつい。 「んくっ…つっ…はぁああぁ……はぁっ…ぁぅ…」 「はぁっ、はぁっ…羽入…入ってる?」 ずぷっ…にゅぷ、にゅぷ、ずりっずりっ……ぬぷっ 最初はきつかったが中程まで進入すると、圭一のモノをすんなりと受け入れた。 「あぅ…はい…全部…圭一のが全部…入ってるのです……」 「平気か?」 「あぅ…だ、大丈夫ですよ……んはぁっ…はぁ……だから動いても…いいのですよ」 「わかった……つらくなったら言ってくれよ?」 125 :名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 23 03 28 ID V2nRt42z すっぽりと収まったモノを、そぉっと引き抜いて、そしてまた埋め込んでいく。 にゅぷっ…ぬぷぷっ…ぬりゅっ…ずぷ…ずずっ…ずぷぷっ…… 「あぅぁ…んはぁっ…はぁっはぁ…あ、あ、あ、あぁ……」 「…はぁっ……はぁっ……」 ずぷっ…づゅちょ…づゅちゅっ…ぷちゅ…ずちょっ…… 「あぅ!あ、あぅぅぁ、あぁ、はぅ…あぅ、あぅ、あぅぅ!」 「…あぁっ…つっ、は、羽入……もう、お、俺……」 ず、ずずっ、じゅぷっ、ずずっ、ずずず、ずぷぷっ…… 「あ、い、いいのですよ…んはぁっ…な、膣内にっ…膣内に出していいのですぅっ!!」 「くぁっ!!」 ぶぴゅっ!!びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ、 「あぁぅ!あっ、あっ、あぁぅあぁあぁあーーーっ!!」 睾丸の中の精子が全て出尽くし、なおも搾り取られるような物凄い射精感のなか、 圭一はその余韻を楽しむ暇もなく、ただぐったりと羽入に覆いかぶさっていた。 ずるぅ…………とろぉ………… 「はぁっ、はぁっ、はぁっ」 「ふぅっ、ふぅっ、ふぅ…あぅ……」 汗まみれになった圭一の顔を横目で見ながら、羽入はぼんやりと思い出そうとする。 (あぁ…そういえば……何年振りだっけ?……) 126 :名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 23 04 11 ID V2nRt42z 見上げた先には蒼深の月、暗い夜の中に光っていた。 その月明かりの下、ふたつの影が重なっている。 ひとりの表情はおぼろげで、何を考えているかは、読み取れない。 ふと、もうひとりが気付いた。 「…どうかしたのか?」 仰向けのまま、夜の空を見つめ、ぼんやりと、呟いた。 「……月を…見ているのですよ……」 「月?」 「あぅ…たまにですけど、なんだか月が……いとおしくなるのです」 「ふぅん……」 「心の奥の方では…あの月が欲しいと、思っているのかも知れないのです」 「じゃあ、やるよ」 「あぅ?」 突然の言葉に、わけがわからない。 今なんて言ったの? ……月を……くれる? 「ほら、見てみろよ」 「…………え?」 指を差す先には水溜り。 見ればそこには綺麗に映し出された月があった。 「な!」 だからその笑顔は反則よ……もぅ…… ……まったく、少し本気にしちゃったじゃない。 ……でも……そんな圭一が好き。 なんていうか……安心感のような…… 圭一に赦して貰えて、おまけに月も貰っちゃった。 今は、これ以上は望まないわ。 あ!そういえば……また、子供できちゃうかな? くすっ…それもいいかも…… あなたとの子供だったら……きっと楽しい事が起こりそうな気がするわ。 「あぅあぅあぅ、圭一はやっぱりすごいのでした。あぅあぅ」 「ははは、うん、そうかもな」 そう言って、また頭をなでてくれた。 水溜りに映る月。 ちょっと触ってみたら、 ゆらゆらと揺れていた。 でも消える事はなく、 しばらくしたら、 また元の姿で輝いていた。 (了)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6936.html
前ページ次ページ帝王(貴族)に逃走はない(のよ)! ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド 「なんだ、あれ……」 魔法学院と首都トリスタニアを結ぶ街道。 首都へと至る道だけあって、それなりに人も通っているが、今現在はそこを通る人々は全て等しく一つの物を見ていた。 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド 別に新手のスタンド使いが現れたわけではない。 一台の馬車が爆走(はし)っているだけであった。 それだけなら物資の往来の激しいこの街道。非常によくある光景で人の注視など集める事はない。 そこから遥か離れ、魔法学院。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが部屋の中にいたのだが、その顔は火が出そうなぐらい真っ赤だった。 ――恥ずかしい……!一体どういう趣味してんのよ! 一度枕に顔を埋めてからもう一度アレを思い出す。 ルイズの脳裏に写っているのはただの馬車なのではなく、決して趣味がいいとはいえない玉座が付いた奇怪なモノ。 そしてそこに悠然と座を構えるのは勿論、聖帝サウザーである。 ある程度舗装されているとはいえ、タイヤではなく車輪というだけあって振動はかなりのものだ。 それにも関わらずに相変わらず何時もの姿勢でゆったりしていらしゃるのだから人に与える衝撃は半端ないものがある。 貴様も来るか?と聞かれた時には全力で遠慮した。 あんなのに乗って街まで練り歩いた日にはあっという間に噂になるに決まってる。 なんだかんだで結局城下を視察する事になったのだが、通常の馬車をベースに玉座部分をギーシュに作らせた。 やれば、先日の事は流してやる。だが、断れば、と言ったところで快諾したようで一晩でやってくれた。 車輪部分も車軸と車輪数を強化したおかげで十分重さに耐えられるようになっていたが、青銅だけあって色は原色そのままだ。 それは追々塗装するか、金にでも錬金させようかと思ったが、金を練成するのはスクウェアでも難しいらしく諦めた。 精神力を使い果たしたギーシュが地面に突っ伏していたが、そんなこんなで聖帝馬車の完成というわけだった。 そんなわけで、塗装も兼ねて城下へと繰り出しているわけである。 ついでに御者もギーシュにやらせているのだが、やはりというか少しぐったりしている。 普通の馬車とは違い重量が重量だけに、馬二頭では足りず三頭立てというのもあるが、後ろにサウザーが居るという事が体力・精神的にも一番疲労を加速させていた。 第伍話『否省』 「おい、小僧」 その言葉で、今にもへばりそうだったギーシュの背筋が伸びる。 「その城下まではあとどのぐらいで着く」 「そ、そうだね、二時間といったところかな」 言葉使いこそ何時もとあまり変わらないが、明らかに口調に惧れが感じられる。 貴族の子弟が御者をやるなど、普通では考えられない事だったし、ギーシュ自身もやるわけないと思っていた。 だが、ギーシュの頭の中には未だに『俺に逆らった者に降伏が許されると思っているのか?』というサウザーの言葉がこびり付いている。 気が付けばいつの間にか馬を操ってトリスタニアへと向かっているところである。 人を従わせる方法は大きく分けて二つに分かれる。 一つは圧倒的なカリスマなどで相手を心服させる事。そしてもう一つが歯向かうなどという気も起こさせぬような圧倒的な恐怖による支配。 分かりやすく言えば、前者が救世主と称えられ奇跡の村を創りあげたトキ。後者が拳王と畏れられ帝国を築き上げたラオウである。 恐怖による支配は長くは続かぬと言ったのは他ならぬサウザーだが、聖帝軍正規兵からはともかく、サウザーも帝王として人々に恐れられていた男だ。 サウザーに屈せぬだけの力はギーシュにはなく、また恐怖を跳ね除けるには若すぎた。 だからこそ何かと突っかかってくるルイズやキュルケはサウザーから見ても興味の対象だったのだが。 そんなギーシュの心情など知ったことではなく、吐き捨てるかのように言うとサウザーが脚を組みなおす。 「ふん。やはり遅いな」 スピードがバイクには敵わないのは当然だとしても、片道でこれでは飽きがくる。 まぁ、針で囲まれた棒の上に二、三日は余裕で立ち続けられる人達なのだから、たかが三時間の行軍がどうだと言われればそれまでだが 修行してるのとただ座ってるのとではやはり違うものである。 それでも、久方振りに目にした自然の光景というものは少しではあるがサウザーに昔の事を思い出させてはいたが。 南斗鳳凰拳先代伝承者オウガイ。 鳳凰が司る星は将星。またの名を独裁の星。 だが、少なくとも幼き日のサウザーから見たオウガイは独裁などというものからはかけ離れていた。 初めて極星十字拳で石灯篭を斬った事は今でも鮮明に覚えている。 あの時の感覚は二度と忘れはしない。 一度は弾かれたものの、呼吸法によって気を練り十字に切り裂いた。 その時のオウガイの表情は二度と忘れる事はあるまい。 少しでも早く鳳凰拳を身に付けオウガイを喜ばせたかった。 ……十五歳のあの時もそうだった。あの試練を乗り越える事で伝承者となり、その先もあの顔を見れると思っていた。 初めて極星十字拳で人を斬った事は忘れようとしても忘れられるはずがない。 目隠しをしていたとはいえ、最も尊敬し愛した師を手にかけた。 身を引けば当時のサウザーの拳など容易くかわせたにも関わらず、オウガイはあえてそれを受けた。 一子相伝の鳳凰拳。先代伝承者は次の伝承者に倒されなければならぬという、北斗神拳よりも過酷な宿命。 ――こんなに悲しいのなら…… 失うのが悲しいなら最初から愛など持たねばいい。 ――こんなに苦しいのなら……! 失うのが苦しいなら最初から情など捨ててしまえばいい。 ――愛など……愛などいらぬ!! 誰よりも愛深き故に、少年がその道を選ぶにはそう時間はかからなかった。 「……っ!またか……」 苛立ちを隠せぬ声でそう呟く。 どうにも退屈すぎて自分でも気付かぬうちに眠っていたようだが、こちらに着てから、この忌まわしき記憶がついて回ってきている。 「あの時以来、そうではなかったのだがな……」 愛と情けを捨てていた時はそういう事はなかったのだが、代償というやつだろうかと思わないでもない。 身体の中に流れる帝王の血が、多少は戻りつつある情けを拒絶しているという事か。 ――埒もない。 聖帝十字陵。 世紀末の世に建てられた、聖帝の権威を誇示せんがための巨大な墓と言われているが その実は、師オウガイの墓にして、サウザーの僅かに残った愛と情けの墓。 その完成を以って完全に捨て去る事ができるはずだった。 だが、ケンシロウの前に敗れ、聖帝十字陵も崩壊した。 それでも、今のサウザーには退くなどという選択は無い。 愛と情けを捨てる事ができなくても、彼は南斗聖拳最強にして将星の星の男。 故に何があろうと退かぬ。故に何人であろうと媚びぬ。故に何が起ころうとも省みぬ。 とは言うものの、現時点では特に動くべき目的も理由も無いので少々手持ち無沙汰な状態ではあるが。 なにせ、世紀末とは違いサウザーの周りの環境は平和そのものだ。 少なくとも、目にしている限りでは僅かな水と食料を得るために人が争う事なく日々を過ごしている。 貴族専用の学院という事があるし、サウザー自身はその恩恵を120%程活用している。 退屈かと聞かれれば、その答えは今のところはNoだ。 拳法とは全く毛色の違う魔法は興味深いものだったし、知らぬ物を知るというのは中々面白い。 ただ、やはりというか、身体の奥底の方では物足りぬと感じている。 乱を望むは将星の性。 というよりは、乱が無ければ将など無用の長物。 乱が無ければどうするか。自ら乱を起こすか、乱が起こるのを待つかの二つに一つ。 自ら起こすには手駒が足りない。 むしろ、足りないというよりはゼロ。 その兼ね合いもあってか見に務めているが、トリステインでは目下のところ、乱が起こりそうな気配は無い。 まぁ、そう急ぐ事もなかろう。 南斗六星の崩壊を引き起こしたような世界規模の大戦がそうそう起こるはずもなく まして、東の方なぞ地図すら無いような状況では、精々国家間の戦争がいいところだ。 現状維持というところで妥協しておいたが、馬車の動きが止まった。 「……どうした」 「前から王宮の勅使を乗せた馬車が来ているんだ」 ふむ。と呟くとサウザーが視線を前へと向ける。 確かに、トリステインの紋章の付いた旗を立てた馬車が向かってきている。 「トリスタニアには王宮もあるからね。きっと、学院長になにかあるんじゃないかな」 「そうか。では行け」 「……!?」 説明を聞いて、サウザーがそう返すと完全にギーシュの思考がパニックに陥った。 普通だったら王宮からの勅使が乗っている馬車が通るとあれば、道を譲るというのが相場というところだ。 それにも関わらず、後ろの男は行けと言う。 無駄にカスタムしたおかげで聖帝馬車はかなり横に大きい。 この街道であの馬車とすれ違おうとした場合、まず間違いなくぶつかる。 主に、横に大きく飛び出た角のような部分が。 「一応聞くけど……街道から反れてという事かな……?」 「何を寝ぼけている。そのまま進め」 一縷の望みを託してはみたが、答えには希望なんてありゃしなかった。 どこかの吸血鬼に『関係ない、行け』と言われた上院議員の心境である。 進めば王宮からの勅使を相手に揉め事になるし、退いたりすれば後ろの男が圧倒的な力量を以ってなにをするか分からない。 完全に板挟みの状態に陥っていると、前の方から衛士かなにかが警告を発してきた。 「王宮勅使ジュール・ド・モット伯の馬車の前に立ち塞がるとはどういう了見か。早々に道を開けられい!」 「ほう。たかだか使い走り如きが、この俺の行く手を阻むか。いい度胸だ」 サウザーから見れば、勅使など単なる伝言役と同等という認識である。 そもそも、例え相手が王族だろうと明け渡す道など一切持ち合わせていない。 それが世界の道理に反するとでも言うのであれば、己が力を以って制圧し平伏させるのみ。 天上天下唯我独尊。 敵は自ずから跪き、相対する者は全て下郎。 今の今まで帝王と対等になった者は唯一北斗神拳伝承者ただ一人。 したがって、悠然とそう言い放ったもの至極当然の事だ。 そうこうしていると、向こうの馬車から一人趣味の悪い服を着たメイジが出てきた。 なんとなくだが、南斗相演会で見た南斗紅雀拳のザンとかいうやつに似ている気がする。髭とか。 修羅の国の名のある修羅のうちの一人の方が似ていると思うけど、サウザーは知らないので割愛しておこう。 「これはこれは、確かグラモン元帥のご子息ではないですか。そのようなところでどうなされましたかな?」 勅使だけあってモット伯は顔が広い。 有力な軍人であるグラモン家にも度々訪れていたためギーシュとも面識があったぐらいだ。 「この俺に逆らった者の末路というところだ。退かぬようであれば貴様もこうなる」 「そこの者。今なんと言ったのか聞こえなかったのだがね」 「その飾りでも聞こえるように言ってやろう。下がれ下郎」 「トライアングルメイジである『波涛』のモットに下郎とは、いや可笑しい。はっはっはっはっは」 わざとらしい台詞と芝居がかった動きでモット伯が笑うと、急に真顔になった。 「私はそういう冗談は許せない性質でね。身の程知らずの平民に一度貴族の力というものを思い知らせてあげよう」 モット伯が腰の杖を抜くと魔法の詠唱を始めると衛士の一人が馬車の中から壷を持ち出し割った。 割れた壷からは水が流れ出している。その事から水使いかと一瞬で判断した。 「イル・ウォー」 「ふん、遅いわ」 さっきまで玉座に座っていたはずのサウザーが、いつの間にかモット伯の懐近くへと飛び込んでいる。 「な……!」 並の拳法の使い手では捉える事すら出来ぬ神速の踏み込み。 まして身体能力はモヒカン以下のモット伯にとってはサウザーの動きは瞬間移動にも等しい。 ――やはりこの程度か。 トライアングルというからには少しは楽しめるかと思っていたが どうやら、魔法のクラスと実戦での強さというのは比例しないらしい。 大口を開けて魔法を詠唱をするなど、隙だらけにも程がある。 魔法がどれだけ強力であろうと、杖さえ持たさねば、詠唱さえさせなければ何の意味も持たない。 「貴様の動きなどスローすぎて欠伸が出る。貴様に比べたら、あの小娘の方が遥かに速い」 詠唱の速さもそうだが、詠唱を悟らせないようにする技術。 その全てにおいてモット伯は劣っている。 この程度であれば興味もなく、これ以上の戯言に付き合う必要も無い。 微動だにしない、いや微動だに出来ないモット伯に向け、サウザーがその拳を向けた。 南斗鳳凰拳 『極 星 十 字 衝 破 風』 ここでようやく我を取り戻したのか、踵を返してモット伯が逃げようとしたが、盛大に転んだ。 いくら慌てていたとはいえ、何も無いような場所で転ぶはずは無い。 軽い違和感がモット伯を襲うと、それがだんだんと大きくなる。 その違和感の方へと目を向けた瞬間、街道に絶叫が響いた。 「うぎゃあああ!脚が!脚が……!」 モット伯の脚からは勢いよく鮮血が噴き出し地面を赤く染め上げている。 「貴様の脚の腱を斬った。二度と自力では立ち上がれまい」 斬られた事すら感じさせぬ鋭さと、腱を断ち切る正確さを併せ持った一撃。 そして、なによりサウザーが素手だった事に、その場の全員が、特に一度殺されかけたギーシュの思考が完全にフリーズしかけた。 「ほう、まだ杖を離さぬか。しぶとさだけはドブネズミ並みというところだな」 腕の腱も断ち切るべきだったかと思ったが、これはこれでいい。 窮鼠猫を噛む。こんな奴でも追い詰められれば何か面白い物を見せてくれるかもしれない。 モット伯にしてみれば、杖がなければモヒカン以下なのだからそれを手放す事などできはしない。 だが、モット伯が口にしたのは魔法の詠唱などではなく、サウザーの期待を大いに裏切るものだった。 「なな、何をしている!こ、殺せ!こいつを殺せ!」 力も技も持たず、己のみでは抗う事すらせぬ。 あんなガキですら、シュウへの愛ゆえに牙を突き立てたというのに。 「見るべきところもなく、与えられた権力に酔い痴れるだけのゴミか。ならば、汚物は消毒せねばならんな」 サウザーにとって権力とは己の力で奪い取るもの。 他人や親から与えられた権力など何の意味も持たない。 あえて言おう、カスであると! 相応の実力があるならまだしも、無能が不相応の権力を持つようではこの国も底が知れる。 だから、這いずるようにして逃げるモット伯の頭を踏みしめた。 「ほう宮はらのひょく旨ではる、わらひに……!」 歯の二、三本は折れ、地面に押し付けられているため巧く発音できていないものの、まだ口だけは動くらしい。 ようやく衛士達がサウザーに武器を向けてきたが、そんな事でこの男が止まるはずはない。 「どうした!この男の命が惜しいのか?ならば武器を捨てよ!」 それは単純な脅迫。 モット伯を救いたければ武器を捨てろと言う。 「ほはえ達、いいはらふ器をふへろ!いいは、命へいら!」 だが、衛士達にしても武器を捨てるという事は、身を守る物を失うという事になる。 もっとも、武器があったとしても、サウザー相手にどうなるというわけでもないが。 それに、捨てたところでモット伯が解放されるとは到底思えなかった。 まして武器を捨てても捨てなくとも皆殺しにされる可能性の方が高いのだ。 従って、衛士達の取った行動は一つだった。 「な、何をひへいる!逃へるな!わらひを置いへいくは!」 モット伯を助けようと戦いを挑めば死ぬ。 武器を捨ててもモット伯は助かるかもしれないが、自分達は死ぬ。 ならば、残る選択肢は見捨てて逃げるしかない。 彼ら自身、モット伯に忠誠を誓っているというわけでもない。 むしろ、平民はおろか貴族の間でも『平民の少女を無理矢理手篭めにしている』と評判は悪い。 命を懸ける程立派な人物でもなく、情けをかけられるような相手でもない。 もちろん、見捨てて逃げたという事になるから、彼らがそのまま王宮に戻るという事もできないだろうが、王宮の衛士と言えど平民。 最悪、傭兵にでもなればいい。 丁度、アルビオンでは内乱が起こっており対立している両派が傭兵を集めている。 王宮の元衛士という肩書きがあれば、普通にやるより高く売り込めるかもしれない。 最初から失う物が少なければ、それを捨てる時の決断は早かった。 「くく……思ったより呆気なかったな」 以前も同じような事があった。 聖帝十字陵の視察に向かった時、レジスタンスに襲われた時だ。 銃を持った一人の男を同じように切り伏せ、残る二人に武器を捨てろと言った。 その時は人質への情けゆえか、武器を捨てる事も逃げる事もなかったので、情けの元を断ってやった。 二人だけでも逃げられたものを、情けがあるから命を捨てる事になる。 逆に言えば、モット伯に掛けられる愛や情けが無かったから見捨てられたという事だ。 愛も情けもかけられず、力も持たず権力に酔うだけの無能。 地面の男をこう評すると、サウザーが頭を潰すべく力を強めようとする。 それでも、何かが潰れるような音がする前にサウザーが足を退けた。 「小僧。気でも触れたか?何の真似だ」 サウザーの後ろでは、さっきまで棒立ちにしていたはずのギーシュが杖を向けている。 「き、君が相手にしているのは、王宮からの勅使だ。それを手にかけるという事はトリステインを相手にするという事が分かっているのかい?」 別に杖を向けられたからと言っても、何の問題もない。 「知らぬな。仮に、この国が俺を倒そうとするのであれば迎え撃つまでだ」 サウザーが気に入っているのは、あくまでルイズという個人であって、トリステインという国ではない。 この国がどうなろうと知った事ではなく、興味も無い。 「ぼ、僕は代々名のある軍人を生み出してきたグラモン家の四男。ギーシュ・ド・グラモンだ。小僧じゃない!」 ギーシュがそう叫ぶと地面の土からワルキューレが練成された。 「君の強さは知っているし、僕が敵わないのも分かる!でも……!」 命を惜しむな、名を惜しめ。 これが代々伝わるグラモン家の家訓だ。 サウザーがトリステインを相手にするという事は、ギーシュが敬愛してやまないこの国の王女や 何より今のところ修復できてはいないが、一番愛しているモンモランシーの身が危ないという事になる。 「僕が愛する女性達を守らずに逃げたなんて言われるのだけは我慢できないんだ!」 わざわざ、達とか言うあたりモンモランシーに聞かれたら投げられる香水の量を増やされそうなものだが、居ないので置いておこう。 相変わらず両腕を下げたまま、サウザーがギーシュへと近づく。 当のギーシュはというと、震える両手で辛うじて杖を持っているような有様で、ワルキューレの制御もままならない。 半ば棒立ち状態のワルキューレを素通りすると、サウザーがギーシュの前へやってきた。 格好つけてみたけど、足が竦んで口の中は唾の一粒も出やしない。 死ぬ前に、ちゃんとモンモランシーに謝りたかったなぁ。 そう覚悟し、ギーシュが目を閉じる。 少しするとガシャリと、金属の音がして恐る恐る目を開けると見事に十字に寸断されたワルキューレがあった。 肝心のサウザーはと言うと、もう既に玉座の上へと座を移しており何時もの姿勢でギーシュを見下ろしている。 「ギーシュと言ったか。その木人形が貴様の姿だ。次は無いと思え」 愛のために戦うとは、面白い事を言ってくれる。 腑抜けだと思っていたが、一度へし折ったはずの心を蘇らせ、聖帝の前に立った。 モット伯など相手にするより余程面白い。 「出せ」 まだ先は長いが、いい退屈凌ぎにはなった。 再びトリスタニアへと奇怪な馬車が進んで行く。 治癒の魔法を使い、やっとの思いでモット伯が脚の怪我を治した時には、学院へ伝えるべき事や この前見て気に入ったメイドを連れて帰ろうとした事は頭にはなく、素手で青銅を紙くずのように切り裂いた男への恐怖心だけが脳裏に刻まれていた。 前ページ次ページ帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!
https://w.atwiki.jp/bastard/pages/402.html
第一章 第二章 第三章 針葉樹林帯|大雪原|氷結湖迷宮|ボラの神殿|磁力吹雪の谷|水龍の祠|巨獣体内|海底都市遺跡|暗黒空間|水星宮|金星宮|蝕影宮|火星宮|木星宮|土星宮|太陽塔|双雪山(左)|双雪山(右)|氷獄塔|氷獄塔中層部|氷のコロシアム 第四章 第五章 クリア後 水星宮 再び、ランがそこにいた。思い詰めた 表情には、この戦いに死を賭して臨む 決心が窺える。至高王の使命を全う することが仲間――そしてカイの命を 奪う結果となるなら、その後で己の命 をも断とうという悽愴な覚悟であった。 それ故、もはやその太刀筋に乱れは ない。このひとときを修羅として 生きる、死人の剣がそこにあった。 D・S: バカ野郎め。くだらねえことに縛られ やがって―― カイ: ラン……もう戻れないのか ラン: 戻れない……俺はカル様とともに、 前に進んでゆくしかないのだ! ラン: く……まだだ。まだ負けられんのだ! シェラ: ラン……これ以上は死ぬぞ! ラン: 構わぬ! カル様のためなら、 俺の命などここで果てても―― ランが死力を振り絞って身を起こし、 捨て身の攻撃に出ようとした、 その刹那――。 シーン: やめて――っ!! 飛び込んできたのは、ランを追って 一行から離れたシーンであった。実の 兄の前に立ちはだかり、両手を広げて それ以上の戦いを制止しようとして いる。そこにはランを想う肉親の、 揺るぎようのない献身の姿があった。 シーン: 兄さん、バカなことはやめて! どうしても戦いを続けるなら、 わたしを殺してからにして! カイ: シーン! ラン: 何を言うんだ……シーン。そこを…… そこをどけ! シーン: どかないわ! 幼い頃兄さんは約束 してくれた。孤児になって、カイと 三人で荒野を彷徨っていた時、 わたしたちを守ってくれるって―― シーン: それは本当だったわ。ろくに武器も ないのに、兄さんは猛獣や追い剥ぎを 傷だらけになって追い払ってくれた シーン: ネイ様に拾われるまでに、兄さんが いなかったら何度死んでいたか 判らない。だったら、兄さんを救う ためにわたしはここで死ぬわ! ラン: ……馬鹿な シーン: 思い出して、兄さん。わたしたちの 村を焼いたのは、そうやって狂った 領主に従い、自分で判断しないまま 戦い続けた兵士たちよ! シーン: 彼らだって、ほんの少し自分で考える 勇気を持てば良かった。今の兄さんは それと同じ……カル=スが操られてる って、気づかないふりをしてるんだわ! ラン: …… シーン: お願い……わたしたちのもとに帰って きて。一緒に、本当の敵と戦って―― ランの手から、剣が音を立てて落ちた。 本心からランを救おうとするシーンの 説得が、至高王への忠誠に囚われた 兄のいましめを解いたのだった。 シーン: 判ってくれたのね! 兄さん! ラン: 真の忠誠か……そうだな。自分の目で 確かめぬ限り、俺はカル様とともに 歩んでいることにはならぬ。 心配を、かけたな―― カイ: やはり実の妹は強い、か。俺がいくら 言っても聞かなかったくせに ヨシュア: カイ……妬いてるんじゃあ……? カイ: ま、まっさかぁ! ちょっとショック ではあるけど……俺も、ランの妹 みたいなもんだしな ヨシュア: 妹……そうか! うん! D・S: ……けっ! 不器用なヤロウだ ヨシュア: んっ? D・S: いんや、別にぃ 再び、ランがそこにいた。思い詰めた 表情には、この戦いに死を賭して臨む 決心が窺える。至高王の使命を全う することが仲間や妹の命を奪う結果と なるなら、その後で己の命をも断とう という悽愴な覚悟であった。 シーン: わたしたち、戦うしかないの……? ラン: シーン、俺を憎んでくれ――行くぞ! カイ: よせっ! ラン! ラン: カイ、か! マントをなびかせ、ランを追うべく 去ったカイが駆け寄ってきた。 その後にヨシュアも続く。 シーン: カイ! ヴァイ: ヨシュアも! お前らどうやって この地下遺跡に? ヨシュア: 至高王が魔戦将軍のために用意した 乗用生物を利用させてもらった カイ: ――ラン。俺の知るお前は、そんな男 ではなかったはずだ。主が正気では ないと気づきながら、間違った忠義に 縛られ愚行に手を貸すなど―― カイ: 今のカル=スに命を賭して仕える 価値はない! それが判らぬお前ではあるまい―― いや、判らぬふりをしているだけだ! ラン: 黙れ……黙れカイ! それ以上の カル様への雑言は許さん――! 恐らくは反射的に、無意識に繰り出さ れたものだったのだろう。その斬撃に、 直前まで捨て身の一撃に転じようと たわめられていた力が乗った。戦場で 鍛えられた颶風の如き刃が、戦う姿勢 になかった無防備なカイを襲う――。 ラン: ――! あわや、カイを袈裟に斬り下ろして いたであろう斬撃は、大剣の刃とカイ の間に身を滑り込ませたヨシュアに 受け止められた。だが、咄嗟に態勢が 整わず、辛うじて刀の峰で受けた斬撃 の勢いを殺し切ることはできなかった。 致命傷ではないものの、ヨシュアの 肩口に内向きの刃が食い込み、 浅からぬ傷を生じさせる。鮮血が迸り、 整った貌に苦痛の表情が疾った。 ヨシュア: くうっ―― カイ: ! ヨシュア! ヨシュアっ! ヨシュア: 大……丈、夫だ……自分の刀で傷を、 受けるなど、わ、笑い種だな……くっ! D・S: 早いとこヨーコさんの呪文で治療しろ! ヴァイ: がってん! 茫然と立ち尽くすランの手から、 剣が音を立てて落ちた。 ラン: 俺は……カイを殺してしまうところ だったのか? 俺は……俺は誓いを 破って――? シーン: 兄さん…… ヨシュア: いや……貴様はまだ、誓いを破った ワケではあるまい…… 魔法の治癒を受けながら、ヨシュアが 苦痛を噛み殺して呟いた。 ヨシュア: 単独で行動した折、行き会ったネイ殿 に聞いた――。貴様はカイと戦わねば ならぬことを怖れ、家族にも等しい 鬼道衆を捨てたのだろう? カイ: ……何? どういうことだ、 ヨシュア!? かつてネイに拾われ、鬼道衆として 育てられた戦災孤児の三人――カイ、 シーン、そしてラン。彼らは訓練を 重ねるうちに非凡な戦いの才能を示し、 とりわけカイとランは剣の達者として、 鬼道衆でも一、二を争う腕前にまで 成長していった。 カイはネイの手ほどきを受け、正統と 呼ばれる破裏拳流剣法を学んだ。一方 ランは独自の才で我流の剣を磨き、 実戦に即した何にも染まらぬ太刀筋を 作り上げていた。 訓練の模擬戦において、ふたりの勝負 は常に互角であった。だが、本気で 挑むカイに対し、ランは余力を残し つつも決してそれを出し切らぬ戦い方 であるように見えた。 当時、腕力に劣る女であることに激し いコンプレックスを抱いていたカイは、 ランを負かして鬼道衆一の剣士の座に 就くことに異常なまでのこだわりを 見せていた。それまでの家庭環境も あったのだろう。弱い女に対し、 カイは憎悪に近い感情を抱いていた。 故に、強い母親である雷帝ネイを 崇拝し、畏敬していたのだ。 同じ村に育ち、同じ幼少時代を過ごし てきたランには、カイの心が手に取る ように判っていた。そのまま平和な村 で成長すれば、いつかは添い遂げて 夫婦となっていたかも知れぬふたり。 だが、過酷な運命に翻弄されたカイは、 剣によってのみその存在を支えている 悲しき女闘士となってしまった。 そのカイを剣で負かしてしまったなら、 彼女の危ういバランスは崩壊するかも 知れぬ――それを恐れたランは、常に 本来の力を抑えて相手をし続けてきた。 しかし、カイの腕に磨きがかかるに つれ、ランも真剣に立ち会わねばなら ぬようになってきた。互角と見せる ためには、己に相当の余力がなければ ならぬ。カイの剣技が成長したことで、 ランは次第に勝ってしまわなければ ならぬ局面に追い込まれ始めた。 同じ鬼道衆である以上、模擬戦の 立ち合いは避けられぬ。次の勝負では、 必ずカイを打ち負かす結果となる―― それを直感したランは、苦悩の末に 鬼道衆を抜ける決心を固めた。 唯一本心を明かしたネイは咎めもせず、 本来勝手な離反を許されぬ鬼道衆の 掟を曲げて送り出してくれた。 彼が傭兵として放浪の末、カル=スの 理想に剣を投じたのは、これより 数年後のことであった――。 カイ: 俺の……ために? ヨシュア: ――貴様は誓ったのだろう。荒野に 焼け出されたカイとシーンを守るのは 自分だと。それ故、カイに勝ち、生き る柱を奪うことはできなかった…… ヨシュア: ならば、今その誓いを果たすんだ! このまま何者かに操られたカル=スに 従い、幼き日の想いを裏切るいわれ などないはずだ! ラン: ……貴公には大きな借りができたな。 俺は誓いを守ろう。そして今一度、 カル様を御前で見定めるとしよう シーン: 兄さん、良かった! カイ: ラン……俺のためだったのか。 俺のせいでお前はネイ様のもとを…… 俺は、俺は――! ラン: 謝らなければならんのは俺だ……もう 少しで俺は許されぬ罪を犯すところ だった。ヨシュアがいなかったら―― 涙を浮かべるカイの肩を、ランが そっと抱き寄せる姿から、癒えた傷を 軽くさすりながらヨシュアは静かに 視線を外した。 D・S: ったく、人がいいヤロウだぜヨシュア はよ! 何も恋敵にお膳立てしてやる こたぁねーじゃねえか。かばって傷を 受けたんだから断然有利なのによ ヴァイ: それがヨシュアのいいところ。アンタ も、俺とヨーコの仲を応援してみない? D・S: アホウ! ヨーコさんと俺の愛に割り 込もうとするヤツぁ、考えつく限りの 卑劣な罠で陥れ、色情狂の腐れアタマ とゆー立場に追い込んでくれるわ! ヴァイ: ひー、アンタいートコなし! 幽かな震動が続き、止まった。 水星宮は正しい座標へと移動した。 上へ
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1341.html
マリエス国 浸透 (8) 時系列的にはおかしい、と言ったのは、実際おかしいわけで>< 帝國の医療魔術とは大したもので、打ち身の痛みを押さえる術なども良く効く。 機装甲を転ばせてかつ、体内の操縦漕で死ぬ者は、年に何人かはいる。死ななくても大怪我をするものはさらに多くいる。 めちゃくちゃ打ち据えられて、多少の打ち身で済むのは、けっこう腕のいい証しだな、とマルクスは己を慰めたりする。 軍医がこれまで相手にしてきた負傷兵からすれば、マルクスの打ち身などかすり傷そのもので、当日は氷で冷やし、あとは痛み止めが要りますか、そうですか、という調子だった。痛みどめは良く効いた。 実動演習から駐屯地に帰還し、演習の講評を行い、事後の研究や改善の元になる資料を残さねば演習は終了しない。マルクスはそれをまとめている。演習そのものの素の観戦記録と、観戦からえた所感と、所感から得られるもう少し抽象的な、そしてより長い先を見る時に使うべき知見とを。 参謀なのだからこちらが主な役割のはずなのだが、標的となって打ち据えられるなど理不尽極まりないと思う。宮仕えはそういうものだとわかっていても。 ヤッサバ黒騎士小隊長は、間違って殺しちまったら、軍法会議には掛けられてたな、などと物騒なことを言って笑った。確かに間違って殺さない程度の仕掛けで、設想に意味が無いと言い放ったヤッサバ小隊長の思うところが、体で理解できた。 それでもマルクスは腹が立ち、つい「では、黒騎士小隊長は制限なしで攻撃を行ったとき、ヴェストラをどれくらいの確度で倒せると考えているのか。六割か」などと言ってしまった。 まずかったとは思うのだが、決してあてずっぽうに言ったわけではない。直接剣は交えなかったが、マルクスとてヴェストラの戦いを見ており、またヤッサバ小隊のやり方を、実際に叩きこまれもしたのだから。 ヤッサバ黒騎士小隊長の目に、刹那に殺気が宿り、だがそれは拭い去られて、聞こえよがしの舌打ちに変わった。彼は現状では何とも言えない。この演習程度で示せるものでもない、と言ったが、六割というのは、彼らの所感としても、当らずしも遠からずであったらしい。彼らが知るのはヴェストラその人ではなく、フォン・ベルリッヒンゲン902大隊長であるわけで、彼らなりに計っての判断なのだろう。フォン・ベルリッヒンゲンをしてもヴェストラを倒すに至らず、戦闘中拘束に留まった。 戦闘中拘束にはもちろん戦術的な意味はある。戦術のみならず、決闘でも狩りでもだ。フォン・ベルリッヒンゲン大隊長がヴェストラを最後まで拘束しつづけたからこそ、帝國軍の各正面は、戦い続けられた。 ヤッサバ小隊は拘束の術にも秀でていて、三機で一体のごとく、入れ代わり立ち代わりの連撃で、対処できなくなるまで追い込んできた。ほかにも鋼索を放ち、あるいは鋼索で作られた網に捕らえようとし、実際にも拘束しようとしてきた。それはもちろん狩りの最後の詰めに過ぎない。 ヴェストラを彼奴の旗本から切り離すための仕掛けこそ、流れの上ではもっとも大きい。そのために彼らは砲撃も行わせるし、地雷に誘い込みだってする。彼らの持つすべてを見せたわけではない。マルクスが白の三でなく、黒の二に乗っていたら、また別の仕掛けから始めていただろう。鑓の機神なら、さらに入念に狩りの策を練っただろう。その柔軟性や狡猾さこそが、ヤッサバ小隊長らの本当の力だ。 対抗部隊でも出さねば、ヤッサバ小隊の実力を評価することなどできないだろう。だが適切な対抗部隊などほぼありえない。901から人員を借りだしてきても、ヤッサバ小隊にとっては勝手知った相手なのだから。 この演習、12連隊の演習に合わせて黒騎士小隊の術を実演して見せろというのは、ヤッサバ小隊にとっても、面倒なだけの見世物だったかもしれない。 ともあれ、講評会議で、12連隊の能力は、高く評価された。 演習査閲官は、いずれも12連隊を高く評価し、卓越という言葉も幾度も出た。連隊長の指導、指揮。隷下部隊、各指揮官、士卒の錬度も高いと評価された。 低いわけなど無い。内戦後に北方出身者をもって編成された、近衛総軍部隊なのだ。旧北方辺境侯軍にあった者らも、多くが志願していた。帝國軍の北方動員をもって、ようやく安寧を得たのちの、志願なのだ。彼らの意気は生半なものではなかった。団結力や組織力でも、彼らはどこのものにも負けていなかった。 マルクスの目から見れば12連隊は、13連隊がトイトブルグに出征する直前より、部隊としての調律は取れていた。あのころの13連隊は、機甲騎兵に何ができるかも、明らかになっていたとは言えなかった。高い戦場間移動力を持つ機装甲を、騎兵で護衛しつつ、敵の苦痛とするところに進出して、機先を制する、その形が作り出されたのは、あれ以後だ。 12連隊は、同じことを帝國の領域内で行う。そのような部隊が求められる切迫性を、12連隊の幹部も、士卒の多くも共にしていた。 それゆえの練度だった。それは帝國の国防として、本来の姿ではない。帝國の国防が、この形に留まっているのは、屈辱でしかない。しかし今、彼らが愛する故郷を護る形は、これしかない。誰もそれを口にしなかった。屈辱は雪がれるべきだが、今の北方辺境にとっては、何も起きないことこそが勝利だ。その勝利のために彼らはある。その強い気持ちがある。 12連隊はその設立目的を達成するための準備が十分に整っている。 それだけではない。連隊には、帝國の道がある。北方辺境では兵站路として、旧南岸諸王国では軍道として整備され、大北方戦争で使われた道だ。休息も、一次駐留も可能な施設もある。これ以上を望むなら運河を作るでもするしかない。もっとも運河では速度は上がらない。12連隊に必要なのは速さのほうだ。 速さを補う通信経路もある。伝令経路は軍道機能としてすでにあり、今も保たれてもいる。これを越えるなら、狼煙のような長距離視覚信号がいる。これも機卒手旗で保たれている。沿岸で事が起きたとしても、その日のうちに連隊は出動可能だろう。 それは非常に高度で複雑な能力であり、これを保つには同じく高度な指揮、査定能力が必要になる。北方軍は本部と部隊の双方でこれを保つ必要がある。 そしてそれは、機神運用、対機神運用について指揮官を補佐する機神担当参謀であるマルクスに求められている力でもある。 彼らに対して指導することも含めて。 マルクスが、12連隊の実動演習に参画したのは、つまりそういうことでもある。 また、北方軍司令であるサウル・カダフ元帥に、元帥を通じて北方辺境公にこの問題の解決について報告すべき立場であるし、近衛騎士である以上近衛騎士団長に対して、他国の機神への帝國側の対処状況と、これに対して近衛騎士団がいかにあるべきかの提言もまた行わなければならない。 大北方戦争が終わったのちにも、マルクスが任を解かれずにある故なのだろう。 「・・・・・・」 これから北方軍本部にとんぼ返りして速報をサウル・カダフ元帥に提出し、つづいて帝都に飛びかえって近衛騎士団長に報告を行う。サウル・カダフ元帥は、ついでに、と諸々の中央での処理を求めてくるわけだけれど、それはまあ、構わない。 覚書だの、講評の写しだのをまとめて書類鞄に入れて鍵を閉じ、続いて私物を雑嚢に放り込む。機甲騎兵であったころですら、行李を手近に持っていたのに、今では雑嚢以外持たぬことも多い。古代魔導帝國の騎士たちには、たぶん手回りの小物などうつし世に顕現させたまま持ち歩くことなどなかったのだろう。操縦槽には余計なものを置くところは無い。 「・・・・・・」 扉を叩く音がして、マルクスは顔をあげた。 「ディートリンデ・ヴィルケ512大隊長です」 驚き、それから慌てて、マルクスは片付けかけていた荷物を寝台の枕元に寄せ、振り返る。、 「どうぞ」 「失礼します」 入室する姿は、以前と変わりないヴィルケ教官の頃のままの姿だった。いや、少し疲れているようにも見える。それはやむを得ない。 「お久しぶりです、ヴィルケ教官」 マルクスは踵を合わせ、礼を行う。ヴィルケ大隊長は、少しの笑みの後に真顔を取戻し、答礼した。 「今のあなたにもそう呼んでもらえるのは光栄です、レオニダス参謀」 マルクスは組椅子へといざなった。軍参謀ともなるとそれくらいの部屋は借りられる。従兵も借りられるには借りられるのだけれど、今のようなときに茶を出すくらいにしか声を掛けない。 ヴィルケ大隊長は、遅ればせながらもご結婚おめでとうございますと言い、稀にだけれど奥様とはすれ違うことはあり、お顔だけは存じ上げておりました、とも言う。マルクスは、にもかかわらず、婚礼の宴席に呼べなかったことを詫び、それから皆さまはお元気か、と曖昧に問うた。 「ええ。とても。前と変わらず」 それが彼女の答えで、それだけでキュエリエ教官が元気でいるのだろうとは思えた。今は13連隊長に正規に昇格したところだろうか。キュエリエ教官が13連隊の機装甲大隊長に就任した後、13連隊は東方辺境に移転した。その後に大損害を受けたという話にはひどく驚かされたのだけれど。 「お忙しいところに申し訳ありません。でも、講評を終えればたぶんとんぼ返りでしょうから」 「いえ、こちらこそ」 マルクスは応じる。 「御挨拶に伺おうとは思っていたのですが。何か、ご用件でも?」 いえ、とヴィルケ教官はかぶりを振る。 「本当にただの御挨拶です。先日のこともありましたし」 すぐにわかった。ヴィルケ大隊長による魔術戦技披露のことだ。マルクスは応じる。 「あれは、花を持たせていただいた形で」 「大隊にも私たちの課程からの出身者がいます」 私たちの課程、という言い方は彼女らしい。さらに言葉は続く。 「励みになるようなものを見せていただけましたし」 「不肖の生徒で」 「近衛騎士でもあられる」 それは機神のおかげ、と言いそうになり、マルクスは曖昧に口を濁す。ディートリンデ一門は帝國の長い歴史のなかで、機神を失ってしまった一門だった。ヴィルケ教官は懐かしげに小首を傾げ、マルクスを見やった。 「髪も伸ばされてるようで。どなたかと思ったくらい」 「これは妻との賭けに負けたからです」 面倒なのでそう答えることにしている。くすくす笑う彼女は、教官であった頃と変わりない。それは黄色中隊であった頃からだろうかとふと思う。 「お幸せそうで何よりです」 「ありがたいことに二人目も」 「それはおめでとうございます」 明るい人の、裏の無い言葉には、癒される。 「髪の賭けも、子供が関わっていました」 「どんな?」 「長男が私を見て、媽媽と言ったので」 もちろんそれは完全に本当ではない、やや膨らませた話ではあるのだけれど。ヴィルケ教官は、額を押さえて楽しげに笑う。 「じゃあ、早く御帰りになりたいでしょうに。引き止めるようなことをしてわるかったかしら」 「うるさい盛りですけれど」 「それはほんのわずかな間だけです。子供はすぐに大きくなってしまうから」 諦めとも、憧れともつかない何かが彼女の面を過ぎ去って行ったように見えた。 そのあとに、彼女は笑った。何か思い出すようにして。それから打ち消すような真顔を保って顔を上げる。 「・・・・・・」 マルクスを見て彼女は、なにか?とでも言いたげに瞬く。むしろマルクスが問うた。 「何か?」 「いえ・・・・・・」 けれど彼女は確かに何かを思い出して、今また笑った。彼女は口元を隠して笑いをこらえる。今までの彼女とは少し違う、艶やかさに似た何かがかすかに過ぎる。 「・・・・・・ごめんなさい。知人のことで思い出し笑いをしてしまって。人というのは、短い間に本当に変わってゆくものだと思って」 「いい友人は何よりの宝といいますし」 「お子さんもですけれどね」 一拍、二拍と、言葉の無い時が流れる。ヴィルケ大隊長は顔を上げる。 「お話できてよかったわ。レオニダス参謀。これから帝都へお帰りになるのでしょう?」 「ええ。何が御用があればお預かりしますが」 「いいえ」 彼女はかぶりを振る。 「帝都とここの間にも郵便はありますから。それよりも、ご家族お大事に」 「ありがとうございます。もうしばらくは12連隊とは縁が切れないとは思います」 「その時には、よろしくおねがいします」 彼女は言う。 「帝國と、この北方を護ることになるならば、いかなることでも、この身に賭けて」 そこでかすかに思いを巡らせ、思い浮かべるのはもちろん帝國のような巨大すぎて一人の人にとってはあいまい過ぎるものではなく、もっと確かに愛する者の姿であろうけれど。マルクスは応える。 「御覚悟、確かに承りました。」 別れは、先よりももう少し親しく、抱擁を交えた。 「・・・・・・」 いかなることでも、この身に賭けて。 しかしそれも、つまるところ、たかがヴェストラ一人。ヴェストラ一人を倒すために、北方全体を狩り場とする。しかも仕掛けが大きくなるほど、巻き込む領域は大きくなる。サウル・カダフ元帥はそれを是とし、北方全体を狩り場として良いともしている。それはもちろん、北方辺境公にも伝えられているし、北方辺境公も是としているはずだ。北方辺境公の是は、つまりそうした時に起きる惨禍を、是とせざるをえないということだ。 ヴィルケ大隊長にも、わかっているだろう。ヤッサバ小隊のように、ただヴェストラを狩るために、それを看過し得るだろうか。 しかし、ヴェストラが倒れればすべてが変わる。もしヴェストラ来れば、どんな犠牲を払っても殺さねばならない。 ヤッサバで確実でなくても、彼がヴェストラを追い込めば、近衛騎士団に狩らせても構わない。ヴェストラはゴーラ最後の剣だ。ヴェストラを失えば、ヨルマ帝のゴーラ治世はおろか、一千年続いたゴーラ帝国が滅び去る。 問題は滅びた後の方だ。滅びた後の策が立つまで、ゴーラ帝国を滅ぼしてはならない。それまでヨルマ朝廷が、ヴェストラの武威をもてあそぶようなことは許してはならない。できれば帝國が次の手を打てるようになるまで、そのままでいてほしい。 「・・・・・・」 とんでもねえ狸親父だ、と毎度のことながら思う。あるいは北方辺境公が、だろうか。二人してなのかもしれない。 ヴェストラを北方辺境に対して使わせないために、北方辺境はヴェストラを生きて返さない仕掛けを作り上げる。 ヴェストラがゴーラ帝国内のどこかに使われるなら一向に構わない。むしろ望むところなのだろう。ヨルマ帝の権威は高まり、ゴーラ帝国の命脈は永らえる。そのヨルマ帝の権威の挑戦先を、帝國に向けさせることだけは、許さない。仕掛けは、そのためのものだ。 まるで棋駒の読み合いのようだ。そしてサウル・カダフ元帥には、ゴーラ帝国もことを知れば同じく判断し、ことを起こさぬと確信しているようだった。 それもマルクスには判る。ヴェストラ軍には、ヴェストラその人の武威を扱える器を持ったものがいる。ヴェストラの武威を、いくさそのものを左右するだけでなく、二つの帝国の対峙を、一方に利するようにと使えるものがいる。 「・・・・・・」 だがまだ足りない。 そもそもヨルマ帝がヴェストラの武威をもてあそばねばならないのは、ヨルマ帝に、というよりゴーラ帝室の威信が失われたからだ。あれほど恐れられたゴルム帝は、帝國と干戈を交える前に憤死した。内戦によって疲弊しきっていたはずの帝國に、ゴーラ軍は散々に打ち負かされ、数百年にわたって少しずつ退いていた北方辺境との境は、ついに南岸の海岸線に至った。 ヨルマ帝はその後に擁立された皇帝だ。ゆえに威信に欠け、三つの大公家は帝室を軽んじ、逆にヴェストラの武威に頼るしかない。これにオスミナのオフィーリア王妃が絡んで、ゴーラ帝国情勢は、すでに帝國が手を入れずには済まないところにまで追い込まれている。オフィーリア王妃のゴーラ、とくにフィンゴルドへの強い態度は、もはや八つ当たりに近い。もちろんフィンゴルドによってオスミナ国土を犯された。怒りは当然で、同時にオフィーリア王妃自身のオスミナでの威信がかかっている。 とうぶん、もしかしたら一生、マルクスはオスミナの国境を跨げないかもしれない。 「・・・・・・」 諦めは人の足を止めさせる、と言ったのは誰だろう。 これは諦めではないのかもしれない。 己が倒れても、まだなにがしかこのうつし世に残り、それが安らかに過ごすところがあると思えるなら、人は諦めの産む沼に沈まずに生きてゆけるのかもしれない。 すっげー強引に〆た。うん。 マリエス国ネタにつなげるには、このままじゃ無理だったわ。 対海賊任務から始めればよかったのか。 おおう(ぽむ) 明日からそれで考えるw